「購買ネットワーク会」という集団をご存じだろうか。企業の購買や調達の担当者たちが集まり、買い方のレベルアップを目指す日本で最も意識の高いバイヤーたちの交流会だ。登録者は現在約500人。勤務先は自動車、電機、食品……名だたる企業が並ぶ。リーマンショック以降、コスト削減が叫ばれる中、「購買の重要性が再認識されてきた」という。
「例えば、私が購買ネットワーク会の東京での集まりに大阪から参加する際、個人同士がウェブ上で相乗り相手を求めるライドシェアを利用します。費用は2000円。新幹線利用時の7分の1です。バイヤーに今求められているのは、ライドシェアのような画期的なコスト削減策を社内へ提案することです。高い要求のレベルに応えるには、取引先の営業マンの力を借りたいのです」(在阪の電子機器メーカーの購買担当A氏)
もし、営業マンがバイヤーに力を貸すことができれば、バイヤーを“味方”にすることができる。必要なのはバイヤーの状況を察知し、ともに課題を解決し、共感を醸成できる力だ。ところが、「営業マンは依然、新幹線料金を何%下げられるかといったレベル」(A氏)という。
そこで、購買ネットワーク会の課長級バイヤー10人に緊急インタビューを実施。“共感力不足10種”を抽出した。
古河産機システムズ 生産部資材課 副課長●渡邉珍彦
1964年生まれ。古河鉱業(現・古河機械金属)入社。本社管理部門に4年間在籍の後、現職。現在は中国調達を担当するとともに調達業務全般を統括する。
「できないことを上司や現場のせいにする」
5.責任回避型営業マン
バイヤーと信頼関係を結ぶことができない典型が「できない理由」ばかり並べる営業マンだ。
「よくあるのは、“部長の決裁が下りない”といってくる営業マンです。われわれバイヤーもそんな理由では社内を説得できません。自分の調整力不足を上司のせいにして、責任回避しているだけです」(古河産機システムズ・渡邉氏)
関西系の大手総合重機メーカー資材課長のE氏はもっと手厳しい。
「営業マンの口から“上司が……”という言葉が出てきたら、“おまえ、何にもでけへんねんな、帰れ”と切ります。決裁するのは上司かもしらんけど、筋道つけるのは本人の責任です。うちのバイヤーにも同じことをいいます」
できない理由を自社の製造現場のせいにする営業マンも多い。精密機器メーカーのB氏はこれを「他責構造」と呼び、強く非難する。
「他人の責任にする構造、略して、他責構造です。自分の売り方を顧みず、自社の製造現場を否定するのは最低です。われわれもメーカー選定の際、現場を見てから決めるようになってきました。そのとき見るのは営業と現場の関係です。営業マンが現場見学をアレンジするだけで、現場に入った途端、あとは現場にお任せ的な対応をするところはだめですね。一方、営業マンが普段われわれに話していることと現場の実態が一致しているところは信頼できます」
日ごろから営業マンが製造現場に通っているかどうかは、すぐわかるという。電子機器メーカーのA氏が話す。
「一緒に工場見学へ行くと、営業マンが工場の偉い人に土産を渡して挨拶するんです。些細なことで営業と現場が疎遠な関係であることがわかります」
総合重機メーカーのE氏も「現場と営業のやりとりをよく見る」という。
「現場の人間が営業マンに対して、“今日はまたおまえ、何しに来たんや”といいつつ、馬鹿話の一つもする。日ごろから現場と対話をしている証拠で、製造も営業から直にいってもらえるのを歓迎しているのが感じられるところは使えます」