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役に立った自伝・評伝・経営者の本【年収1500万円】

【土井】「役に立った自伝・評伝・経営者」もなかなか面白いと思います。年収によって本田宗一郎の扱いが異なるのです。1500万では6位、800万と500万では2位です。本田宗一郎には反体制的な側面があり、かっこいいと思うからではないでしょうか。しかし、既存勢力打倒みたいなことを発想している人は、だいたい現実世界では勝てていない人です。そういう反体制的な感覚の持ち主は、上にいけないのです。

一方、稼いでいる人はもっと頭が柔らかくて、体制派だとか反体制だといった目で人を区別せず、冷静に実力を評価しています。1500万でスティーブ・ジョブズの評価が高いのはそのせいでしょう。

もうひとつ面白いのが、1500万の6位にエジソンが顔を出していることです。エジソンといえば一般的には発明王ですが、ジャック・ウェルチと同じ順位で名前が出てくるところを見ると、1500万の人はエジソンがGEの経営者だったことを知っているのでしょう。グローバル・カンパニーの経営者に目配りをしていることがわかります。500万だと6位が野球の清原ですからね(笑)。

ジョブズなんて小粒ですよ

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役に立った自伝・評伝・経営者の本【年収800万円】

【成毛】全体的にビジネスマンの名前が多いけど、僕としてはここに出てくる人、全部面白くないなぁ。はっきり言ってみんな小粒です。ビル・ゲイツとかジョブズを偉大だと言う人が多いけど、日本人だってもっと面白い人がたくさんいます。たとえば戦前、満州の建国に奔走した甘粕正彦とか李香蘭(女優の山口淑子)。あの時代の人たちは、いい悪いの議論は別にして、大ベンチャーをやったわけです。新しいものをつくって売れてよかったね、なんていうレベルとは全然違う。甘粕の評伝を読むと、馬賊は出てくるし大泥棒は出てくるし、もうダイナミズムが全然違う。

もちろん本田宗一郎や盛田昭夫が目の前にいたらすごい人なのだと思うけど、明治時代の渋沢栄一なんてもっとすごかった。何しろ日本の上場企業の5分の1ぐらいをひとりでつくっちゃったんだから。

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役に立った自伝・評伝・経営者の本【年収500万円】

研究者なら、数学者のフォン・ノイマンとかね。20世紀が生んだ最高の天才です。ノーベル賞の受賞者たちが、「ノイマンに比べたら自分なんてサルみたいなものだ」ってみんな言うんだから、本当にぶっ飛んだ天才ですよ。

こういうとんでもない人たちの自伝や評伝を読むと、生きるのが楽になるんです。自分の人生に起こっている問題なんてたいしたことじゃないと思えてくる。評伝や自伝を読む意味はそこにある。