企業の場合、暴力団関係者や関係企業との取引を避けることが第一となる。フロント企業から酒を仕入れるとか観葉植物のレンタルを受けると、市価よりも格別高い料金を支払っていなくても「利益供与」とみなされ指導を受ける。暴力団関係者の活動を助長することを知ってサービスを提供することも条例違反だ。

これまでに、暴力団関係者の冠婚葬祭に宴会場を提供した飲食店や組事務所の内装工事を行ったリフォーム業者、暴力団事務所からの贈答品の注文を受けた百貨店などが「注意」や「勧告」を受けた。たとえ匿名であっても、その事実が報道されれば、地方によってはそれだけで社名が特定されてしまう場合もある。

「東証2部に上場していた建設会社のスルガコーポレーションは、立ち退き交渉を依頼していた不動産会社が暴力団関係企業であることが発覚して株価が暴落、銀行融資も受けられなくなり、08年6月に民事再生法適用を申請、倒産しています。今後は暴力団との関係が企業の存亡を左右するような大きなリスクになるでしょう」と園部洋士弁護士は予想する。

何の措置も講じないまま、暴力団との関係を指摘されたら、「内部統制に問題があった」として責任を問われる可能性が高い。では、どう対処すべきか。

07年6月、政府の犯罪対策閣僚会議幹事会は「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を出している。そこで発表されたのが「暴力団排除条項」の導入の意義についてである。以来、金融機関をはじめとする多くの企業が契約書および取引約款にこの条項を取り入れており、また、「反社会的勢力でない事の表明・確約書」への、署名とその提出を求めるようになっている。まだ導入していない企業は、既存や新規の取引先に対して、すぐにでもこの「表明・確約書」を提出してもらうべきだろう。

現在、再開発など大規模な建設工事に関しては、その都度、暴力団等排除対策協議会が設けられ、警察、暴追センター、弁護士会との協力のもと暴力団の介入を排除する取り組みが広がっている。

「暴力団等排除対策協議会は、東京ミッドタウンや新宿コマ劇場跡地の再開発事業でも設置され、効果を上げています。協議会設置の宣伝効果は大きく、それだけでも暴力団などからの不当要求がかなり減少します。また、企業がホームページなどで暴力団の排除を宣言することも有効です。暴力団はリスクを感じれば近づかなくなるからです。逆にいったんつけこまれてしまうと、裏社会の隅々にまで噂が広まり、暴力団等反社会的勢力に取り込まれるおそれが非常に高くなってしまうのです」(園部弁護士)

林・園部法律事務所 弁護士 園部洋士
1965年、茨城県生まれ。水戸第一高校、明治大学法学部卒業。同大学院修了。2011年から東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長。同委員会編『暴力団排除と企業対応の実務』が発売中。
(久保田正志=構成 尾崎三朗=撮影)
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