世界経済の枠組みが大きく変容しつつあるいま、先進国の債券や株式だけで資産をもつのは、じつは高リスク。わかってはいても、うっかり新興国の金融商品に手を出すのは怖い。たしかに、ここ数年で資産を減らした人は少なくない。だが、そんな中でもキラリと光る高利回り商品は存在する。まずは投資哲学を身につけるところから始めよう。
個人の資産形成においてまず注意したいことは、短期で高いリターンを狙う「投機」ではなく、長期で安定的にお金を増やしていく「投資」を意識することです。リーマン・ショックによる大幅な相場の変動を経験した後は、「ある程度タイミングを捉えて売買したほうが儲かる」と考えるのも一理あります。しかし、個人投資家が相場のタイミングを捉えるのは難しいうえ、値動きに賭けていてはいつか足元をすくわれます。短期で大きく儲けるのではなく、少なくとも10年以上の長期で捉えたほうが、リスクも軽減でき、結果的には資産を増やすことにつながります。
もう1つ、資産を守るために大切な考え方が「分散投資」です。分散投資には、投資先を分散させる「資産の分散」と、投資のタイミングを分散させる「時間の分散」があります。
「資産の分散」とは、投資先の国や地域、債券や株式などの資産クラスを分散してポートフォリオを組むことによって、全体としての価格変動リスクを抑え、安定運用を目指すことです。一般的には「国内外の資産に分散するのがよい」とされていますが、私たちの個人資産は、8割以上が現金や預貯金、保険、将来受け取る年金で占められており、その大半は国債で運用されています。つまり、私たちの資産は、知らないうちに“国債まみれ”になっているのです。
今後、国債が暴落したり、為替相場が円安方向へ進んだりしないとも限りません。資産を日本円だけで保有しておくのは、外貨に換算した場合に資産が目減りするリスクを抱えることになります。国内で働いている限りは給料も日本円で支払われることを考えると、せめて資産の一部は海外資産に振り分けておくべきではないでしょうか。
海外資産といえば、これまでは比較的リスクの少ないとされる先進国の債券や株式を中心にポートフォリオを組むのが王道でした。ところが、リーマン・ショックを境に世界経済の枠組みは一変し、先進国を中心に考えられてきたこれまでの常識も通用しなくなっています。
金融危機に陥った先進国の経済が減速し、財政再建のための借金に苦しむ一方で、消費の担い手となり、世界経済を牽引するようになったのは中国などの新興国です。さらにこの先20年後には、中国のGDPシェアはアメリカを抜いてトップに、インドは日本を抜いて3位に浮上すると考えられており、世界経済の中心が新興国に移っていくことは間違いありません。先進国から新興国へのパラダイムシフトが起こっていることを考えると、これから新たに投資する分は海外資産、とくに新興国へ振り分けていくのがよいでしょう。