時代の変化に伴って患者数の多い病気も変わってくる。現在、患者数が増加している病気の1つが「緑内障」である。

2003年3月、日本緑内障学会は「緑内障の疫学調査結果」を発表した。それによると、調査対象となった40歳以上3021人のうち17人に1人が緑内障だった。それまで緑内障の罹患率は30人に1人といわれていたので、大幅な患者数の増加である。しかも、そのうちの60%が眼圧が正常にもかかわらず視野が損なわれる「正常眼圧緑内障」であった。かつては緑内障は眼圧が高くなることで起きるとされていたが、そうでないケースが半数以上もあったわけだ。

緑内障は、情報伝達経路である角膜から脳までの間の視神経に問題が起こり、そのために視野が欠ける病気である。

目の構造はカメラによく似ている。外の光景はレンズの役割をする角膜や水晶体を通過し、眼底の奥の壁、フィルムにあたる網膜にピントの合った像を結ぶ。網膜に映った光景は光情報として視神経を通って脳へ伝達され、そこで初めて物を見たと認識されるのである。ところが眼圧が高くなることによって、脳への入り口である視神経乳頭部にへこみがでてくると、神経線維がとぎれ、そこから先へは情報が行かなくなってしまう。視神経は神経線維の束なので、とぎれたところから視野が欠けていくことになる。

ここで問題なのは、正常眼圧緑内障の場合、眼圧は10~20ミリHgと正常であることだ。そのため眼圧が高くなったことで起きる目の痛みなどの自覚症状がないまま、症状が進行してしまう。また、症状は10年くらいをかけて徐々に進行していくのと、片方の目で見えないところはもう片方の目でカバーしてしまうため、日常生活では視野が損なわれていることに気づきにくい。早期に発見するには年に1回、眼圧、眼底、視野の検査を受けることである。自己チェック法としては「テレビチェック法」と「新聞株式欄チェック法」がある。

<テレビチェック法>

放送されていないチャンネルの砂嵐画面を出して、画面の中央に小さな目印を貼る。少し離れて片目ずつ交互に、その目印(固視点)に視点を定める。すると、緑内障初期の人では中央の目印の上部、または下部に弓形に砂嵐が抜け落ちているところがある。さらに進行すると、砂嵐の見えない部分が広がっていく。

<新聞株式欄チェック法>

新聞の株式欄には文字がぎっしり均一に詰まっている。やはり、固視点となる文字を決めるなりして印をつけ、少し目を離して片目ずつ交互に見る。文字が見えなかったり、雲がかかっているようなところがあれば、緑内障の初期である。

緑内障は日本の中途失明原因第2位に挙げられるが、早期に発見して治療に入れば、まず失明に至ることはない。

 

食生活のワンポイント

目の疾患の多くにはアントシアニン、アスタキサンチン、リコピンがしっかり予防に働いてくれると報告されている。

アントシアニンには、網膜病変や眼精疲労といった目の障害を改善させる働きがある。網膜には光情報を脳に伝えるロドプシンという伝達物質があるが、目を使っているとロドプシンは減少してしまう。そのロドプシンを再合成するのが紫色の色素アントシアニンである。これによって視覚機能がアップし、視野が広がる。ブルーベリー、ブドウ、赤ジソなどに多く含まれている。

アスタキサンチンは抗酸化力を発揮する天然の黄色から赤色のカロチノイド色素である。ビタミンEの1000倍といわれる抗酸化力があり、動脈硬化を防ぎ、目の血流を改善してくれる。サケやエビなどの魚介類に多い。リコピンはトマト、柿、アンズ、ピーマンといった食品に多く含まれる赤色の色素で、抗酸化パワーで視覚機能を改善する働きがある。