夏を迎えると、より活発化するのが、日本人の20%が感染しているといわれる「水虫」。正しくは白癬菌というカビによる皮膚真菌症の一種である。
日本医真菌学会疫学調査委員会によると、皮膚真菌症は皮膚科受診患者の13%を占め、そのうちの90%弱が白癬によるものである。足白癬が65%と最も多く、35%が爪白癬と体部白癬だ。
年齢的には40~60代に多いが、最近では、若い女性の間で水虫に悩む人の数が増加傾向にある。ある団体の調査によると、冬場にブーツを着用する21歳の女性31人のうち、7人が水虫にかかっていた。その罹患率は23%にもなる。
問題は、これだけの罹患率にもかかわらず、「別に水虫で死ぬことはないのだから」とか、「どうせ治らないのだから」といった理由で放置して、適切な治療をしない人が多いことだ。
確かに直接の死因になることはないかもしれないが、糖尿病で免疫力が弱っている患者で、水虫を悪化させ、さらにそこからバイ菌が入って足の壊疽(えそ)が進み、片足の切断にまで至るケースもある。
治らないなどというのも大間違い。水虫は、根気強く薬を塗り続ければ、3カ月で完治する感染症である。逆に、放置すれば自分ばかりでなく、家族など周囲の人に感染させる可能性が高い疾患でもあるので、正しい知識を身につけたうえで、しっかり治療に取り組みたい。
水虫には「小水疱型(しょうすいほう)」「趾間型(しかん)」「角質増殖型」の3タイプがある。
小水疱型……足の土踏まずを中心に足の縁、足の付け根などに粟粒大の水疱がいくつもでき、水疱が破れて白く皮がむける。周辺は多少の赤みを帯び、強いかゆみがある。
趾間型……足の指の間が白くふやけたようになり、赤いびらん面が現れる。
角質増殖型……足の裏全体に白癬菌が増殖。角質層が硬く厚くなる。このタイプになるとかゆみなどの症状はなくなる。
長く水虫と共存した結果、治癒しにくい角質増殖型へと進行し、「爪白癬」を併発するケースも多い。爪白癬は爪の中に白癬菌が入り込み、そのため爪が白や黄色に濁って厚くなり、表面がデコボコしてしまう疾患だ。
水虫の疑いがあれば、まず医師の確定診断を受け、角質増殖型や爪白癬にまで進行させないように、まずは3カ月間、しっかり治療薬を塗る。その後は予防として1週間に1~2回、間隔をおいて塗るようにすれば、再発を防ぐことができる。角質増殖型や爪白癬には塗り薬のほかに経口薬を併用する。繰り返しになるが、水虫は必ず治る疾患である。
食生活のワンポイント
水虫は白癬菌による感染症なので、体に抵抗力をつけるのが最大のポイント。免疫機能を働かせるのに不可欠なタンパク質、加えて免疫の主役である白血球の働きを助けるビタミンCを十分に摂取することだ。タンパク質の摂取量は、1日80グラム以上、ビタミンCは100ミリグラム以上が目安である。
タンパク質は牛・豚・鶏肉のほか、魚、卵、大豆製品、乳製品などからバランスよくとる。ビタミンCは果物や野菜に豊富だが、熱を加えると壊れやすいので、生野菜や果物を1日に最低1回は口にする習慣をつけるとよい。
さらに、きのこ類に注目。椎茸、まいたけ、しめじ、なめこなどは、1年中、スーパーに並んでいるので、手軽な逸品として食卓へ。免疫力を回復させるパワーがあるうえ、ノンカロリーなので、1品増えたところで太る心配はない。大根おろしとあえるとビタミンCも多くとれて一石二鳥だ。
食生活以外にも、次の6ポイントも実行してほしい。「室内の掃除は毎日行う」「風呂には毎日入り、足の裏や指の間まできれいに洗う」「風呂上がりには、足の指の間の水分まで拭く」「足はなるべく乾燥させておく」「同じ靴を毎日はかない」「家族に水虫の人がいたら、全員で治療に取り組む」