顔が変わるまで殴られたり、お互いにビンタしあうよう強制された

しかも、本来なら本籍地の部隊に入るところ、縁もゆかりもない小倉に行くよう命じられた。その理由について、『アンパンマンの遺書』(岩波現代文庫)では、検査官がやなせの身上調査票を見て次のように語ったと説明されている。

「貴様は父も母もなく、弟は養子に出て、戸籍ではたったひとりか。国家のために一身を捧げても泣く者はいないな。心おきなく忠誠を尽くせ。おめでとう」

ここからは「ビンタの嵐吹き荒れる恐怖の内務班」の生活が始まった。ビンタの合図は、「一歩下がって足を開け! 眼鏡をはずせ! 奥歯をかみしめろ!」。足を開くのは、よろけて転ばないため、眼鏡をはずすのは壊れないようにするため、奥歯をかみしめるのは舌をかまないためだ。「ボクサーのように顔が変型してしまう」「一人駄目だと、一班全員なぐられる。革製の上靴でなぐられたり、むきあってたがいになぐりあう往復ビンタというのをやらされる」など、悲惨なものだった(『アンパンマンの遺書』)。