“ADHDのような”症状を引き起こすメカニズム
実際に、乳幼児期の過剰なスクリーンタイムが「ADHDのような症状」を引き起こすことは、多くの研究でも示されています。
「ADHDのような症状」に関する4つの研究
① リスクが約7.7倍に……
カナダのSukhpreet K. Tamana博士らの研究(2019年)では、5歳時点で1日2時間以上スクリーンを見る習慣のある子は、ADHD症状に該当するリスクが、そうでない子の約7.7倍にも上ることが示されました。
② 注意力、実行力が低下……
シンガポールのGUSTOコホートを用いた長期研究(2023年、Evelyn C. Law博士ら)によると、生後12カ月時点でのスクリーン時間が長い乳児は、生後18カ月で行った脳波検査において前頭中央部でシータ波が高くベータ波が低いパターンを示し、9歳時点で注意力や実行機能のスコアが有意に低下していたことが報告されています。
③ 情報の処理や的確な判断・行動が難しく……
イスラエルと米国のTzipi Horowitz-Kraus博士とJohn S. Hutton博士らの研究(2022年)では、スクリーンへのアクセス頻度が高い子どもほど、前頭葉を含む複雑な行動や意思決定を可能にする神経回路と、視覚情報を選択的に処理し注意をコントロールするための神経回路網「視覚注意ネットワーク」が、一体として動作する力が低下していることがわかりました。これはつまり、目の前の情報を効率的に処理したり、状況に応じた的確な判断や行動をとったりすることが難しくなる可能性がある、ということを示唆しています。
④ 「多動」になるリスクが4.62倍に
中国で4万2841人を対象としたJian-Bo Wu医師らの大規模研究(2022年)では、乳幼児期(0~3歳)のスクリーン視聴時間が長いほど、3歳時の多動傾向が強くなり、特に1日3時間以上も視聴したグループでは、スクリーンを見ない子に比べて多動症状が出現するリスクが4.62倍高くなっていました。
これらの研究では、乳幼児期にスクリーンを見せる時間が長ければ長いほど「多動傾向」や「注意力の低下」が現れる可能性が高いこと、そして「脳の重要な部位(前頭葉など)に発達の遅れを示す変化が見られる」ことが指摘されています。
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