7歳から始まったサヘル・ローズという新たな人生

施設では、「空爆で、家族全員が亡くなった」と聞かされて育った。サヘルさんは、そのストーリーに対して首を横に振る。

「それは、施設の職員が良かれと思って、当時の子どもたち全員に言っていることです。私の場合はけっこう、時代的にも複雑な事情で、家族に置き去りにされたみたい。残っている記録を見ると、きっと親戚はどこかに生きていると思います。記録では、私は12人きょうだいの末っ子で、それなら、きょうだいの誰かはどこかにいるでしょう? 父母っていう人たちにしてもその町(激戦地)に戻っている時点で、亡くなっている可能性が高いのですが、そういうことが何一つ調べようがなくて、それがつらいです。どんなに頑張っても、知ることができない事実もあるわけです」

サヘル・ローズさん
撮影=増田岳二

今につながる“起点”となり、幼いサヘルさんにとって記憶がはっきりとした像を結んでくるのが、7歳の時に養母となるフローラさんが出現してからだ。