いまの経済環境で投資は「ギャンブル」になるだけ
投資が儲かるのは、基本的に経済が右肩上がりで伸びているからです。その意味では、現在の投資環境はそれとはほど遠いものです。
ウクライナや中東で続いている戦争の影響は、株価や為替といった形で私たちの身近に現れます。そして、これから世界で何が起きるのかは、誰も予測できない。
こうした、先の読めない世界情勢のなかで、金融商品にお金を投じるのは、「投資」ではなくギャンブルそのものです。
世界情勢が不透明化しているだけでなく、国内に目を向けても、景気はけっして安定しているとは言えません。
その大きな要因となっているのが、「アベノミクス」の負の遺産とも言える「格差拡大」と「円安」です。
2013年に当時の安倍晋三首相が掲げた経済政策、アベノミクスは当初、「異次元の金融緩和のもと大企業が潤えば、その雫は、中小零細企業や一般のご家庭にも滴り落ち、みんなを豊かにする」と大宣伝していました。いわゆる、トリクルダウン理論です。
そしてアベノミクスで大企業は大儲けし、2023年度末までに企業の貯金にあたる内部留保を600兆円以上貯め込みました。
その結果、この儲けが雫となって滴り落ちることはありませんでした。給料は上がらず、給料から物価上昇分を差し引いた実質賃金は下がり続けました。
しかも、当初は「全国津々浦々まで、景気回復を実感してもらう」などと言っていた安倍首相自ら「アベノミクスでトリクルダウンは起きない」と言い出す始末。
そのため、富めるものと貧しいものの貧富の差は広がり、目指した豊かさとは正反対に、モノは潤沢にあっても、思うように買えなくなり、個人消費は低迷し続けました。
「アベノミクス」のあまりに大きな副作用で円安に
アベノミクスは、「金融」「財政」「成長」の三本の柱で推し進められるはずでした。
けれども、「財政」は途中で消え、「成長」は、戦略がないまま実行されず、結局「金融」の一本足打法となり、なんとか景気を維持するために、日銀が大量の国債を買い上げる大規模金融緩和を10年以上続けていたのです。
一方、コロナ禍で景気を底支えするために金融緩和で金利を低くしてきた海外の先進国も、コロナ禍が収束して景気が再び上向きになったのを見て、軒並み金利を上げました。
それなのに日本だけは、あまりに長くゼロ金利(途中からマイナス金利)を続けたために、物価が上昇したら金利を上げて抑えるという普通の国が行なっている政策が打てなくなってしまいました。
長期間続いたアベノミクスの副作用があまりに大きかったのです。
海外は金利を上げるのに、日本では金利が上げられない。そうなると、海外との金利差が開きますから、円が売られてドルが買われる「円安」が進んでしまったのです。
お金は金利の低いところから高いところに流れますから、金利の低い円が売られて、金利の高いドルが買われ、円安になるのは当然のことなのです。