やはり健康状態が声に表れているようで元気がなくて続けられない状態というのが、適切な説明である。辞任表明時には、「政治的局面の打開」を辞任の理由としたが、現在では総理自身が振り返っているように健康問題だったことがデータからも明らかであろう。

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図1:チャートの数値が大きいほうが、表れた感情レベルが高い/図2:通常の健康状態であれば、感情の起伏が認められる(PANA=写真)

一方、今回の施政方針演説では、喜びや快活な感情というものが顕著に出ている。この施政方針演説の最中では一貫して力強い感情成分が検出されており、気力に満ち溢れている状況がデータからも読み取れる。

同一人物であったとしても、体調によってこれだけ声に含まれる感情成分が異なってしまうというよい事例だ。力強い主張、勢い、強い思い、それが感情の起伏として表れている。よい演説というものは感情の起伏が非常に激しく、訴えかける要素が強い。このあたりも今回の高支持率の1つの原因にもなっているのだろう。一部の識者は「また健康不安を起こすのではないか」と疑問を呈しているが、少なくともこの施政方針演説からは精神面での不安はないと考えてよいだろう。

一流の俳優と三流の違い

一般的に心の状況はゴム鞠のように考えられており、心が健康なときには感情の弾みがあり、一度感情の弾みが失われると心の健康を害した状態になっているものと推測できる。

安倍総理の場合は、一度は健康状態を害しつつも、そこから見事に立ち直られた例として非常にわかりやすい。自分自身の状況が感情としてストレートに声に表れやすい真面目な方なのだろう。

話し方という観点に立ってみると、演技発話のプロである役者の皆さんの台詞の話し方は非常に参考になる。