小さな街の喫茶店には限界がある
そして、実はこれは「喫茶店消滅」の大きな要因でもある。冒頭で触れた帝国データバンクの調査でも、倒産した喫茶店のうち8割以上が資本金1000万円未満の中小零細店だった。つまり、個人経営の喫茶店・カフェだ。
そうなると「ゆっくり休憩・リフレッシュできる癒しの空間」と「小腹を満たす軽食」という消費者の求めるものを提供することは難しい。
まず、資本がないので「広い店」が持てない。その限られたスペースで商売として成立させるには、できるだけ席を多くしてそれなりに回転もさせないといけない。つまり、スタバのように「パソコン開いて仕事始める人」「ベビーカーを押すママ友の集団」みたいな客はすべて「営業妨害」になってしまう。
また、喫茶店・カフェを個人で経営しようという人は基本的にコーヒーにこだわりがあって、「美味しいコーヒーを提供したい」というモチベーションが強い。しかし、それを求めている客はわずか1割程度だ。実際は、客を飽きさせない新作パフェや季節を感じる軽食メニューの開発が重要になってくる。
喫茶店・カフェ愛好家はスタバを目指す
そこに加えて、個人経営の喫茶店・カフェは人によっては「癒しの空間」にならないという大きな問題がある。
この業態は、いわゆる「マスター」の世界観、雰囲気、キャラクターなどに基づく属人的ビジネスだ。そこにハマった人は「常連客」になって何度でもリピートするが、そこにハマらない人からすればかなり居心地の悪い空間だ。
例えば、おしゃべり好きなマスターから「仕事何してんの?」「最近の石破はダメだね」なんてガンガン話しかけられたら、休憩もリフレッシュもできない。店に入ったら常連客だらけで、マスターと友達のように盛り上がっている中で、1人だけ孤独感を味わいながら急いでコーヒーを飲み干す、なんてこともあるだろう。
もちろん、すべてがそうではないが、個人経営の喫茶店・カフェというのは消費者のニーズと、経営者側が提供したい価値に大きなギャップが生じやすいものなのだ。
スタバの場合、この問題が起きることは少ない。「安くてうまいコーヒー」を求める人はコンビニコーヒーやドトールなど安価なチェーンに行くので、この店にくる人は「ゆったりとした空間で休憩・リフレッシュをしたい」と目的意識が明確だ。
そして、「サードプレイス」を掲げる店内はそういうニーズを満たすものになっている。休憩やリフレッシュのお供になりそうなスイーツや軽食も用意されている。
だから、喫茶店・カフェ愛好家はスタバを目指すのだ。