※本稿は、井出留美『私たちは何を捨てているのか』(ちくま新書)の一部を抜粋、再編集したものです。
コンビニ経営者の偽らざるホンネ
2022年の年末、あるコンビニのオーナーがSNSにこう投稿していた。
「廃棄金額年間で売価480万円の当店。これでも時間帯により棚スカスカです。以前よりかなり廃棄減らしてこれです。これが現実。キツい。もっと減らしたらもっと棚スカだ」
その翌日の投稿には「元旦、前年データと全然ちがう動きしてる。年越しそばたちが大量に売り場で年越してる」とある。
食品ロスは減らしたい、でも売上は減らしたくないとギリギリのところでコンビニを経営するむずかしさが伝わってくる投稿だ。
筆者は2017年から大手コンビニの食品廃棄について取材をおこなっている。同じ系列のコンビニでも、年間1000万円以上を捨てている店舗もあれば、独自に「見切り(値引き)販売」をおこない、ほとんど捨てていない店舗もある。
だから、先のSNSに投稿された廃棄金額480万円というのは、筆者にとって実感に近い金額である。
年間1店舗あたり468万円を廃棄
公正取引委員会は、2019年10月から2020年8月にかけて全国の大手コンビニエンスストア5万7524店を対象におこなった調査(対象店舗のうち1万2093店が回答)から、大手コンビニが食品を1店舗あたり年間468万円(中央値)廃棄していると報告しており、その金額にも近い。
国税庁によれば民間の給与所得者の平均年収は460万円である。つまり、コンビニ1店舗は1年間に、国民の平均年収を上まわる額の食品を捨てていることになる。
単純に対象店舗数の5万7524に廃棄金額の468万円を掛けると、大手コンビニの年間廃棄金額は約2692億円となる。これはウクライナ危機や記録的な円安で食料価格が高騰し、食料自給率を含め国の食料安全保障の見直しを求める声が上がる中、見過ごせない額だ。