チョコレートの効用はどのようなものか。チョコレート愛好家の市川歩美さんは「1657年にロンドンにオープンした『チョコレートハウス』は、文化人や政治家たちが出入りする大人のための社交場で、当時は高価だったチョコレートが飲み物として提供されていた」という――。
※本稿は、市川歩美『味わい深くてためになる 教養としてのチョコレート』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
チョコレートは最近まで飲み物だった
チョコレートと聞いて、あなたは「固形」を思い浮かべますか? それとも「液体」を思い浮かべますか? きっとほとんどの人が「固形」と答えるでしょう。板チョコやチョコ菓子などの、食べるタイプを思い浮かべたと思います。
しかし、ひと昔前は逆で、ほぼ全員が「液体」と答えたはずです。その理由は、チョコレートは長い間、飲み物だったからです。
え、ほんとですか! という声も聞こえてきそうですが、チョコレートが固形になったのは約180年前のこと。カカオの5300年の歴史から考えれば、ごく最近の出来事です。
さて、イギリスのチョコレートドリンクについて、お話ししましょう。
フランスやスペインでは、チョコレートは宮廷で広がったのに対し、イギリスではすぐに一般市民へと広がりました。
1650年頃にチョコレートがイギリスに伝わり、1657年にはロンドンに「チョコレートハウス」がオープンしました。
チョコレートの家……魅力的な名前ですよね! 「チョコレートハウス」とは、大人のための社交場で、文化人や政治家たちが出入りして、政治や経済について語ったり、賭け事を楽しんだりする場所のこと。ここでは、当時は高価だったチョコレートが提供されていました。