楽しくお金を使えないのは日本の教育に原因

いまの高齢者は、小さな頃から節約と貯金が身についている人が多く、たくさんお金を持っている上に、人並み以上の贅沢は求めず、いまだにお金をコツコツと貯金している人がたくさんいます。

慎ましく暮らすことは大切ですが、必要以上に慎ましい人を見ると、私は「お金の使い方を教わってこなかったからではないか」と思うようになりました。

頑張って稼いだお金なのに、高齢になっても楽しく使うことができないのです。

夕食を食べるシニアカップル
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

それは、日本の教育に原因があります。

日本は、1945年に、第二次世界大戦で敗戦し、東京などは焦土となりました。そこから経済を復興させるには、銀行にお金を集め、銀行が企業にそのお金を貸し付け、その金で企業が設備投資をしたり多くの人を雇い、雇われた人たちがしっかり働いて稼ぐ。そして、稼いだお金を銀行に貯金するという経済循環が不可欠でした。

そこで、政府は国をあげて「貯蓄教育」をしてきたのです。

小学校の5年生、6年生を体育館に集めて「強制貯金」

いま、政府は積極的に投資を呼びかけ、「新NISA」をスタートさせましたが、当時の政策は真逆で、「投資より貯金をしましょう」と盛んに宣伝していました。

荻原博子『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP研究所)
荻原博子『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP研究所)

戦争が終わった翌年の1946年に、通貨安定対策本部を中心に「救国貯蓄運動」がスタートすると、「25年度“特別貯蓄”で3400億円達成」などのスローガンを掲げ、貯蓄教育のために小学校に「こども銀行」をつくりました。

「こども銀行」などと聞くと、団塊の世代より後に生まれた人たちは、おもちゃのお金を使って貯金の教育をするのかと思うかもしれませんが、そんな模擬的なものではありません。

学校が「子ども通帳」なるものをつくり、毎月決まった日に小学校の5年生、6年生が体育館に集められ、そこで待ち構えている金融機関に、家から現金を持ってきて貯金するのです。

つまり、当時の貯蓄教育は、子どもに対する「強制貯金」そのものでした。