認知症になりやすい人には、どんな特徴があるのか。4月30日に『筋肉革命95 何歳からでも実現できる 95歳まで歩いて楽しい人生を』(日刊現代)を発売するねりま健育会病院の酒向正春院長は「仕事一筋で、友人や趣味を持たない人ほど認知症リスクを抱えやすい」と指摘する。具体的な事例をもとに、ノンフィクション作家の野地秩嘉さんが聞いた――。(第4回/全4回)
指さして怒るビジネスパーソン
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怒りっぽくて頑固で、わがままな65歳

第4回は認知症になりそうな父親を持つ娘(30代)からの質問を掲載する。

彼女はマスコミ関係で今のところ独身。定年退職した公務員の父親を持つ。65歳になる父親は妻と同居しているが家庭は冷え切っている。それは父親が不倫したからだ。激怒した母親は不倫相手(女性)に対して法的措置をとり、相手から和解金を取った。

本来であれば、父親はひとり暮らしをするべきなのだが、米を研ぐことすらほとんどしないので、母親が何も言わず、食事だけを出している。母親は許していない。同居はしているが、会話はほとんどない。

相談者は酒向先生に訴える。

「怒りっぽくて、頑固で、わがままな父が認知症への道をひた走っています。私は絶対に面倒を見たくありません。認知症にはなってほしくないのです。どうすればいいんでしょうか」

酒向先生はため息を漏らした。

「大変ですね。ただ、こうした悩みはあなただけではありません。こういうケースはよくあることのひとつです」

定年後は身体を動かす仕事をやったほうがいい

そして、先生は質問に答えた。

「とにかく毎日、誰かとコミュニケーションをとることです。お父さんは仕事はしているのですね。(相談者:はい、定年後の再就職です)そうですか。それはいいことです。仕事に自信のある人は少しでも長く仕事を続けることです。身体が動くうちは何でもやってみる。

(相談者:でも、うちの父は何の資格もないし、デスクワークしかできません)

そんなことはありません。変なプライドを持っている人は掃除とか警備の仕事を嫌がるかもしれませんが、環境を綺麗にすると気持ちよくなりますし、安全を守る仕事は感謝されますので、身体を動かす仕事をやるほうが認知症にはなりにくい。ずっと机に座ってパソコンを見ているほうがよくない。

退職後の仕事の目的は出世ではありません。人とのコミュニケーションです。仕事を通して人とつながることができるのだから、清掃業でも庭の手入れでもなんでもやることです。シルバー人材センターに登録すればいい。

『掃除なんてできるか』と考えて、何もしないで孤立状態になったら、それこそ認知症まっしぐらということになります。

お父さんには働いてもらうこと。長年歩んできたキャリアがあるじゃないですか。今の仕事をやめても、それに近いボランティアをやればいいんです。多少の小遣いをもらえればそれでいいんです。そう伝えてみてください」