ヴァンス副大統領の逆上

会談は冒頭の50分間が報道陣に公開されている。おおむね和やかに進むかと思われた矢先、およそ40分が経過した時点でJ.D.ヴァンス副大統領の発言を受け、ムードは一変した。ウクライナはロシアとの「外交交渉」にもっと努めるべきだとした自身の発言の真意をゼレンスキー氏に質されると、ヴァンス氏は逆上。「この会談で一度でもありがとうと言ったのか?」など矛先を変え攻撃に転じた。ゼレンスキー氏が「何度も言った。今日も」と答えたにもかかわらず、「ありがとうと言え」と命令口調で要求を続けている。

バンス副大統領
ヴァンス副大統領(写真=The White House/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

トランプ氏はその後、自身のソーシャルメディアへの投稿で、「私は優位に立ちたいわけではなく、平和を望んでいる」と釈明。「彼(ゼレンスキー氏)はアメリカの大切な執務室で、米国を軽んじた」と非難した上で、「平和への準備ができたら戻ってくればいい」と添えた。

「プーチンは約束を守る」トランプ氏が口走った根拠のない信頼

ヴァンス氏が火種をまいたとの分析が広まる一方、トランプ氏の大統領としての資質に疑問が投げかけられている。

ゼレンスキー氏はロシアによる侵攻を矮小化するトランプ氏らに苛立ち、いつかアメリカもロシアの脅威を感じる日が来るかもしれないと述べた。「あなた方は素晴らしい海に守られているから今は感じていないでしょうが、将来的には感じることになるでしょう」と述べたこの発言が、トランプ氏の逆鱗に触れた。

トランプ氏はゼレンスキー氏の言葉を遮り、「私たちがどう感じるかを決めつけるな」と声を荒らげている。「あなたは今、良い立場にいない。あなたは今、手札を持っていないんだ」と見下すトランプ氏に対し、ゼレンスキー氏は、「私はカードゲームをしているわけではありません」と切り返している。「私は非常に真剣です、(トランプ)大統領。私は戦争中の国の大統領なのです」

トランプ氏は発言の端々でアメリカの国威をちらつかせており、おそらくは“小国”と見くびったウクライナから反駁を食らった苛立ちがあったのだろう。負の感情をむき出しにした会談は、トランプ氏の国際的な評価を急落させた。ある欧州外交官は、米ワシントン・ポスト紙に対し、「吐き気を催すような光景だった」と振り返る。

トランプ氏は会談中、「プーチンは約束を守るだろう」「私は彼と話し、今や長い間彼を知っている」とも主張している。ロシアが和平案を遵守すると仮定することで、目先の停戦交渉のテーブルにウクライナを着かせたい思惑だろう。ウクライナ支援の拠出金を減らそうと意欲旺盛だ。だが、元アメリカ国防長官のレオン・パネッタ氏は、米CNNの番組で、「プーチンは信頼できない」と警告。ロシアにくみする姿勢に疑問を呈している。