早慶の就職先でも「コンサル人気」が続く

熾烈な争いを続ける早慶だが、すでに高い知名度を誇り母集団形成においてはまったく苦労しない両校が入試改革行うのはひとえに優秀な人材を輩出するため、と言っていいだろう。

入試の「ダブル合格」においては現在、早稲田優勢であることはここまで述べてきた通りだが、その熾烈な受験競争を潜り抜けた学生たちがどのような就職先に進む傾向があるのかを下記にまとめてみた(図表3、4)。

早稲田大学 就職先企業ランキング(2023年度)
早稲田大学「2023年度 早稲田大学進路状況」を基にプレジデントオンライン編集部作成
慶應義塾大学 就職先企業ランキング(2023年度)
慶應義塾大学「2023年度 上位就職先企業」を基にプレジデントオンライン編集部作成

上記を見て分かるようにコンサルをはじめとする文系総合職への就職が目立ち、一見して親御さんも喜び友達にも自慢できる就職先が並ぶ。

しかし、これからの時代、一流企業に就職した人でも「ノースキル文系」は淘汰されていくかもしれない。

なぜ「暗記偏重・ペーパーテストスタイル」をやめるのか

「ノースキル文系」とは私がよく使う造語だ。新卒で一流と呼ばれる企業に就職しても日本の伝統企業特有の社内ルールや身の処し方などに対応することに明け暮れ、何のスキルも身につけずにいると、20代を終える頃には転職が難しくなる。そうして企業にしがみつくしかなくなってしまった人材のことを「ノースキル文系」と呼んでいる。

このような人材は一昔前の終身雇用の時代であれば問題なかったが、これから先の未来においてはどのように身を振っていくかが課題となるだろう。早慶両校が入試において暗記偏重・ペーパーテストスタイルからの脱却を試みているのは、この流れに影響を受けているように見える。

早慶だけでなく私立大学全般に言えることだが、過去10年間で入試のあり方は様変わりしてきた。先述した早稲田の入試改革とは別に、以前から両校ではAO(総合型選抜)入試による入学者数も増加傾向にある。AO(総合型選抜)入試とは、志望理由書や小論文、面接などを課す選抜方式のことだ。

さらに、推薦入試の台頭や附属校の内部進学により、現在は5割前後の入学者がペーパーテスト(一般入試)を経ずに入学している現状がある。入試スタイルは大きく3つに分かれ、伝統的な3教科受験は淘汰されつつあるのだ。近い将来、過半数の入学者が中高時代の「取り組み」や「経験」によって進路を切り拓く時代となっていけば、ノースキル文系の苗代となっている暗記偏重の「私文職人」は絶滅するかもしれない。

【関連記事】
【図表を見る】早稲田と慶應、人気なのはどっち?(2018年~2024年の変遷)
【図表を見る】早稲田大学 就職先企業ランキング
【図表を見る】慶應義塾大学 就職先企業ランキング
全国に7つある「旧帝大」に序列はあるのか…北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州の「政治的な位置付け」
「三菱商事"採用大学"ランキング」を見れば一目瞭然…学歴社会・日本で成功に必要な「出身大学の最低ライン」