2025年1月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。政治・経済部門の第4位は――。

政治・経済部門では、米の価格高騰の原因を深掘りしたキヤノングローバル戦略研究所研究主幹・山下一仁さんの記事が1位に。山下さんは政府が備蓄米を放出しても「米の価格は下がらない」と強調しています。2位は、かつて「第2の夕張市」と呼ばれた高知県須崎市のリポート。人気キャラクター「しんじょう君」を活用して財政危機から立ち直らせたキーマンに、ライターの甲斐イアンさんが迫る長編記事です。3位には、解剖学者・養老孟司さんが「田中角栄のせいで日本が貧しくなった」と指摘する記事がランクイン。長引く景気低迷の原因を養老さんの視点で深掘りした記事に注目が集まりました。1~5位のランキングは以下の通りです。

第1位 だからコメの値段が下がらない、下げるつもりもない…JA農協のために備蓄米を利用する農水省の呆れた実態
第2位 ふるさと納税が200万円→34億円に…「第2の夕張」と呼ばれた金欠の町を元フリーターのヨソ者が復活させるまで
第3位 日本人がここまで貧乏になったのは「田中角栄のせい」である…養老孟司が見抜いた“不景気の根本原因”
第4位 ソ連崩壊前にそっくり…「呑まなきゃやってられない」酒におぼれるロシア人を大量に生み出したプーチンの限界
第5位 「マイナンバーカードには有効期限がある」トラブル続きのマイナ保険証を政府が国民に押し付ける本当の狙い

酒にすがりつくロシア人

ロシアのアルコール危機が深刻化している。2024年1~10月期の小売販売量が過去最高を記録し、アルコール依存症も10年ぶりに増加に転じた。

ロシア・モスクワのクレムリンで、全国的なチャリティー・キャンペーン「新年の願いの木」の一環として、ドネツク人民共和国の15歳の少女アリーナ・ポルカルと電話で話すロシアのウラジーミル・プーチン大統領=2025年1月7日
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
ロシア・モスクワのクレムリンで、全国的なチャリティー・キャンペーン「新年の願いの木」の一環として、ドネツク人民共和国の15歳の少女アリーナ・ポルカルと電話で話すロシアのウラジーミル・プーチン大統領=2025年1月7日

背景として、ウクライナ戦争によるストレスが指摘されている。軍事作戦の長期化で国民の精神的緊張が高まり、アルコールに依存する傾向が強まっているという。クレムリンの職員ですら、業務中の飲酒量が「1杯」から「1本丸ごと」に増えたとの海外報道も出ている。

影響はロシア国民だけでなく、ロシア軍内部にも及ぶ。シベリアのある市では、採用された新規入隊者の大半がアルコール依存症者との状況だ。防空壕での一気飲みや、酔った兵士への体罰など、規律の乱れも目立つ。

歴史的にもロシア軍は、アルコール依存症に苛まれてきた。むしろ戦士たちを鼓舞する向精神薬代わりに使われていたようだ。日露戦争時の旅順要塞では、弾薬ではなく1万箱ものウォッカが届き、司令官が降伏を決意したとの逸話が残る。

ウクライナ戦争を契機にアルコール問題は、再びロシアの社会不安と軍事力の弱体化を象徴する問題となった。専門家たちは、この状況が続けば、ロシアの「人的資本の長期的な劣化」を招く可能性があると警鐘を鳴らしている。

アルコール販売量18億リットル、史上最大を記録

ロシアの独立系メディアであるモスクワ・タイムズ紙によると、同国の小売アルコール販売量は2024年1月から10月までの間に18.4億リットルとなり、統計を開始した2017年以降で最高を記録した。2017年の同期間と比較して21%増えており、前年同期と比べても0.8%の増加となる。

ただし、この数字でさえ控えめなデータだとの指摘もある。酒販業界誌のドリンク・ビジネスは、ロシアにおける実際のアルコール消費量は、公式統計を約30%上回る可能性があると報じている。さらに同誌によると、ロシアのアルコール飲料市場の約60%をウォッカやコニャック、リキュールなど、度数の高い蒸留酒が占めているという。

強い酒ほどよく売れているようだ。ロシアの大手酒類メーカー、ラドガ社のベニアミン・グラバル社長は同誌の取材に対し、「2019年から2023年にかけて、当社のワインの出荷は45%の伸びにとどまっている一方、蒸留酒では売り上げが150%増加した」と語っている。