「とりあえず勉強、とりあえず大学」のリスク

心配なのは、いま小学生~高校生の子育てをしている人びとだ。

とりあえず塾に入れて、とりあえず大学に行かせておけばよいというルートを選んで、善かれと思って子どもを「お勉強エリート」にしたはよいものの、かれらが世の中に出るころには、先述したように人間の知性の価値が暴落していて、「AIの劣化版」くらいの残念な評価しか受けられない可能性がどんどん高くなっている。

文系を目指す場合はなおさらだ。かれらのほとんどは卒業後には事務系の職種を志望することになるわけだが、先述したとおり事務職はもうすでに顕著な「人余り」になっている。今後さらにこの傾向は加速する。事務系の仕事はAIやAIを併用した外部サービスがどんどん代替していく流れは今後も変わらないからだ。

逆に子どもを「非お勉強エリート」的な方向性、語弊をおそれず言ってしまえば「ヤンキー」的なコースで育ててフィジカル的な仕事に就かせる人びとのほうが、結果的に梯子を外されずに生き残る可能性が出てきている。私は周囲の幼い子を持つ子育て世帯には「とりあえず進学・とりあえず高学歴を目指すな」と忠告している。令和生まれの子どもたちが大人になるころには、AIはいまとは比べ物にならないくらい賢く創造的になっていることは目に見えているからだ。

ノートをとる女子生徒の手元
写真=iStock.com/Milatas
※写真はイメージです

「破壊的」な変化がやってくる

むろんAIと同じ土俵で勝負しても「勝てる」くらいの奇才はゼロではないだろう。だが、小さいころから塾に行ってがり勉にがり勉を重ねてようやく東大に合格するくらいの知性ならまず勝てない。それをするくらいなら、フィジカルの性能向上のための時間とリソースを投じてあげたほうがマシだ。

AIはおそらく私たちの文明を見たこともない場所に連れて行ってくれるだろう。だがその旅では、私たちの「知性」が社会経済的にプレゼンスを失うことが路銀代わりになる。

ただなんとなく、抽象的な記号をやりとりする「頭をつかってやる仕事」がずっとこれからも人間の仕事の主流のままだと想定していると、それはたしかに「破壊的」な変化になることは請け合いだ。

筋肉の時代が到来する。

シートベルトを締めろ。

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