長時間の説教からの“仲直り”のセックス

A子さん(20代)は夫からの長時間の説教に悩まされてきた。それはいつも、食事の味つけが気に入らない、家事育児をしていて夫からの着信に気づかなかった、A子さんのちょっとした言葉や態度が気に入らない、などのささいなことがきっかけで始まる。正座をさせ、ミスや欠点を執拗に責めながら、「おまえは妻失格だ!」「そんなことで泣くなんて、人として未熟だ!」などと罵倒するのだ。

A子さんが意見を言うと、非難されたと受け取り、過剰反応して激高、説教がさらに長くなる。理論武装された屁理屈が3時間も4時間も続き、深夜まで寝かせてもらえない。

そして、A子さんが疲れ果てたところで、「許してやる」と、“仲直りのセックス”にもつれ込まれる。A子さんにとって、それは拷問にも思えたが、気分を損ねてまた説教が始まるかもしれないと思うと、断る気力はもう残されていなかった。

「話し合い」「夫婦げんか」という名の説教・罵倒

A子さんは意を決し、弁護士を通して、「モラハラが原因で離婚したい」旨を伝えると、「単なる夫婦げんかではないか!」と、夫は反論した。

しかし、加害者が言う「話し合い」や「夫婦げんか」は、世間一般的な意味合いとは違う。お互い、譲れるところ、譲れないところを出しあって歩み寄ろうとするものではなく、「あなたの意見でいいです」と相手が折れるまで強硬姿勢が続く。言ってみれば、自白を強要する違法な取り調べのように、自分は絶対正しいという思い込みから、自分が描いた「理想的な結論」に当てはまる言葉を強引に言わせるためのものなのだ。

A子さんは渦中にあるときには無自覚だったが、やり場のない苦しみや悲しみや怒りが蓄積されていったのだろう。ストレス性の微熱が続いたり、動悸や呼吸困難の症状が出たりするようになっていったという。

恐怖で黙らざるを得なくなる

B子さん(30代)の夫は、怒りの火がつくと荒れ狂って、物に当たるタイプだった。家の中にある物を拳で殴打したり、蹴ったりする。ゴミ箱は何個も壊され、壁には穴が開いた。「直接暴力を受けるわけではないから、DVとは言えないだろう」と思う人はいるのかもしれない。しかし、物の破壊はB子さんにとっては威嚇となり、「逆らったら何をされるかわからない」という恐怖に支配されてしまう。

「やっぱり、言いたいことがあっても、物の破壊が始まると、萎縮してしまいます。『お金のことで相談したいんだけれど』と言った途端、ガン! と大きな音を立てられると、黙るしかありません」