「フジテレビで出世するための条件はただ一つ」
まず、人事権を駆使して、徹底した「オールイエスマン」体制を作り上げたことです。今回、フジ関係者は「フジテレビで幹部になり出世していく条件はただ一つ。日枝さんに気に入られるかどうかだ」と語りました。
「役員になるのは、日枝さんに絶対たてつかない、子飼いの人だけ。能力では選ばれないため、役員クラスは決算書も全く読めず、経営のけの字も知らない、無能な人だらけという印象です。日枝さんの首に鈴をつけられる人物はいません」(前同・関係者、以下同)
聞けば、女性の場合は、主に日枝氏の秘書をした人が昇進するという不文律があり、現在の2人の女性役員のうちの一人も報道局勤務の後、秘書をしていた時期があるとされます(もう一人は総務省からの天下り)。彼女は取締役の立場でありながら、1月17日の会見直後に、「日枝氏の特命を受けて、支局の新たな移転先の視察」のためパリ出張を決行。このタイミングでの渡航に、さすがに社内からも「危機感がなさすぎる」と不満の声が上がったといいます。
社内外のとっておきの情報を提供して"天皇"を喜ばせる
長期体制のもう一つの要因が、お金、情報、人脈の「上納」制度を確立させたことです。独裁体制の中で、お金を差配するばかりではなく、情報と人脈を利用して、その地位を盤石なものにしていきました。
「特に現執行陣の中には、報道局や系列の新聞社出身の人も多くいますが、彼らの多くが、政治家とのつながり、パイプ、人事やお金にまつわる社内外の情報を日枝さんに提供していくことで、気に入られていきました」
自身も政治家と太いパイプを築いているといわれますが、次々とカネとネタとコネを吸い寄せて、権力を絶対的なものとしたのです。とはいえ、社内では、常に権力者然とした振るまいをしているわけではないようです。
「日枝さんはふだんジャンパーで社内を歩き回り、社員とも気さくに言葉を交わす側面もあります。ただ、“奥の間”に入ると近づきがたいオーラを発し、報告する社員は直立不動で絶対服従、恐怖で声が震えてしまう人もいるという話はよく聞く」
“天皇”の前にひざまずく「コバンザメ管理職」や「ヒラメ上司」が、結果的に低い社内の人権意識、今回の不祥事を招いたといえるでしょう。