スモールベースボールの名手に未来はない

ベテランの野球指導者の中には「スモールボールに戻るべき」と主張する人がいる。

彼によれば「やっと昔ながらの高校野球のあるべき姿が、戻ってきた印象です。バットをぶんぶん振り回すのではなく、ボールをよく見極めて出塁し、その走者を丁寧に送っていく。チームの勝利のために1点を大事に取っていく。それがこれからの高校野球の姿です」というのだ。

しかしながら、金属バットの基準改定に伴うこうした「スモールボール化」に対しては、疑問視する声もある。

ある野球指導者は、「今、本気で野球で食っていこうと思っている高校生の目標は、甲子園ではなく、プロでさえもない。みんなMLBを目標に置いている。MLBではバントなんか滅多にやらない。それよりも、来た球をしっかりコンタクトして、速いスイングスピードで振り抜く方が大事だ。それに、バントなんか、大学やプロなど上のレベルに行っても習得できる。それよりも速い球に振りまけない鋭い振りを身に付ける方がずっと重要だ」と話す。

今、プロ野球で「バントの名手」と言われる選手の多くは、プロ入り前は中軸打者だった。プロには入って役割が変わって、そこから犠打の技術を習得したのだ。

高校時代からバントの練習をして「スモールボールの名手」になっても、そこからの発展性はない。まして今は、日本野球とフライボール革命全盛のMLBとは地続きになりつつある。

2024年4月21日、メッツ戦の3回、5号2ランを放ったドジャース・大谷。メジャー通算176本塁打とし、松井秀の記録を抜いた=ロサンゼルス
写真提供=共同通信社
2024年4月21日、メッツ戦の3回、5号2ランを放ったドジャース・大谷。メジャー通算176本塁打とし、松井秀の記録を抜いた=ロサンゼルス

日本野球の未来のためにやるべきこと

飛ばない金属バットの導入は、木製バットとの違和感を是正する意味で、大事な改革ではあった。打撃技術の向上のためにも有益ではあるだろう。

しかし、それによって昔の野球に「先祖返り」するのでは、あまりにも魅力に欠ける。若者世代を野球に惹きつけることはできないのではないか。

木製バット同様の飛ばない金属バットでも、長打、本塁打を連発してこそ、野球の未来は拓けるのではないか。多くの野球選手の目標になっている大谷翔平は、いつでも、どんなバットでもフルスイングして、夢を掴んできたのだ。

打球速度が高まることによる怪我のリスクを回避するためには、選手を集めるのが精いっぱいのチームや、連合チームなどと、私学の強豪チームが対戦しないようにするために、高校野球のカテゴリーを「一部、二部」に分ける措置が必要ではないか。

さらに二部はリーグ戦にして試合数を増やすなどして、すそ野部分の底上げを図る必要があるだろう。

新しい金属バットの導入を「野球の明るい未来」につなげるため、さらに踏み込んだ取り組みをしてほしい。

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