有益な情報はネットにタダである

また、利益面においては、新商品や新サービスを市場に投入して売上高の急拡大を目論む際には広告宣伝費などの経費をかけて一時的に利益を犠牲にすることが必要な場面もあるでしょう。しかし、株式会社において株主の経済的な取り分は唯一、純利益からのみです。ですから、5年、10年の時間軸で、その推移を注視する必要があります。

ある年に減益や赤字になるだけでなく、それが延々と続く、そうでなくても度々起こるようであれば、株主としての取り分が増えていくことは期待しづらくなります。そのような企業の株を欲しがる投資家の数も当然減っていくことでしょう。

ここで出番となるのが、さきほど触れた有価証券報告書です。有価証券報告書は全体では100ページを超えるものも多いのですが、この時点で見るのはさきほど言及した「主要な経営指標等の推移」という、その中にある1ページのみです。

これは有価証券報告書の2ページ目に必ず載せられているもので、直近の5年(5期)分の売上高、利益などが一覧できます。その企業のウェブサイトのIRページやEDINET、あるいは「株主プロ」のようなサイトで過去をさらにさかのぼることができます。可能であれば10年(10期)分の数字を拾って並べて眺めてみましょう。

「成長」「安定」を確認する方法

ここでは、一般用(ドラッグストア等で買える)医薬品とスキンケア商品の製造販売を行っているロート製薬を具体例として取り上げます。下の表はロート製薬の2024年3月期までの直近11期分の業績です。

2024年3月期の売上高は2708億円となっていますが、前年2023年3月期の売上高2386億円から伸びています。コロナ禍前の2020年3月期の売上高は1883億円、その翌年2021年3月期は1812億円と微減しましたが、そこから3年で50%売上高を増加させることに成功しています。

10年前、2014年3月期の売上高を確認すると、1438億円でした。10年で2倍には届きませんが、着実な成長がうかがえます。というのも、この間に売上高が前期比で減少したのは2021年3月期のみでした。成長性だけではなく安定性もあることがわかります。

当期純利益も確認してみましょう。2014年3月期は89億円でした。翌2015年3月期の純利益は86億円と減益となりますが、2016年3月期は90億円と増益します。その後、2019年3月期までは100億円近辺をウロウロしましたが、2020年3月期に純利益154億円とすると、そこからは増益を継続、2024年3月期には309億円と、2020年3月期から純利益を倍増させました。

業績推移を並べてみて売上高もさることながら利益がさらに伸びているのがわかったことで、この企業への関心、興味がグッと高まった方も多いのではないか、と想像します。その関心、興味が、事業の特徴や強みを主体的に調べる原動力になることでしょう。