少ない投資でたくさん稼げているか

有価証券報告書の2ページ目には、主要な経営指標の推移とあわせて、財務状態に関する数値が載せられています。純資産額、総資産額、そして自己資本比率です。

純資産額は、株主の持分を示している一方、総資産額はその企業の全ての資産の金額を示しています。自己資本比率は総資産に対して株主の持分がどのくらいの割合を占めているかを示しています。自己資本比率の数値が大きい方が、借入金等への依存が少ないことになります。

ロート製薬の場合、2024年3月期末、総資産3461億円に対して純資産2470億円。自己資本比率は71%と非常にガッチリとした財務内容です。加えて保有の現金は865億円と十分な状態だと言えます。財務状態が健全であると評価できる企業です。

その企業が「少ない投資でたくさん稼げているかを、キャッシュフローの状況から確認する」ことも、有価証券報告書の2ページ目にある主要な経営指標等の推移からざっくりとしたイメージを持つことができます。

キャッシュフローとは企業の現金の流れを示しています。「利益は意見、キャッシュは事実」という言葉もあるくらいで、例えば減価償却費や引当金の計上方法(=経営者の意向)によって変わる利益とは違い、現金の流れ、キャッシュフローはありのままの姿であるため、ごまかしが利きません。よって、両方を見ることが大切です。

3つのキャッシュフロー

キャッシュフローは3つに分類されます。営業活動によるキャッシュフロー(以降、営業CF)、投資活動によるキャッシュフロー(以降、投資CF)、財務活動によるキャッシュフロー(以降、財務CF)の3つです。

営業CFは読んで字のごとく、その企業が事業活動、日々の営業から新たに生み出した現金の金額を示しています。企業間の取引では現金を受け取る前に売上を認識することが通常ですし(いわゆる「掛け売り」)、また仕入れた商品が売れるまでは在庫として残るため、利益が出ていても営業CFがマイナスになることもあります。

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ただ、大きな付加価値の創出を継続的に実現できている、稼ぐ力のある企業の営業CFは、通常コンスタントにプラスになります(※業種によって例外はあります)。

投資CFは企業の設備投資、事業買収等の投資活動に関わる現金の増減を示しています。積極的な新規投資を実行する企業の投資CFはマイナスになります。新規投資を行わず遊休資産や事業の売却を行った場合などは、投資CFがプラスになることもあります。

積極的に新規投資を実行する企業の場合、投資CFのマイナス額が営業CFよりも大きくなることもあります。そのような場合は手持ちの現金を取り崩すか、銀行から借入金を増やす、あるいは、新たに増資するなど資金調達を行いますが、これらの結果の現金の流れが財務CFになります。財務CFには株主への配当や自社株買いでの現金の動きも反映されます。