そもそも「かぜ」は病名ではない

その理由は、医薬品メーカーの不祥事などによる業務停止処分が発端といわれているが、それだけでなく、そもそもの医療費抑制政策としての薬価切り下げや原材料費の高騰によりメーカーが利益率の低い医薬品の増産をためらうといった構造的な問題があるとされる。こうした背景のもと急速に需要が高まれば、当然ながらユーザーすべてに十分な医薬品は供給できなくなる。

じっさい今回のインフルエンザとコロナの大流行で、多くの人がその当事者となっていることだろう。「かぜ」を引いたからと、かかりつけ医にいつも処方される薬を頼んでも、「欠品なんですよ」と断られたり、代替品を出されたりという経験をした人もいるのではなかろうか。

ちなみに私がかぜに「」を付すのは、かぜとは病名ではなく、鼻からのどといった上気道から、ときに下気道とよばれる気管支に急性の炎症をおよぼす疾患の総称、「かぜ症候群」だからである。したがって医師による「かぜ」との診断は、症状や診察所見から「かぜ以外の疾患」が考えにくく除外されたときに、はじめて下されるものだ。医師が「診断はかぜです」と断言や明言せずに「おそらくかぜでしょうね」と濁した表現で“診断”を患者さんに伝えるのは、このためだ。