※本稿は、折茂肇『ほったらかし快老術』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
![腰を痛めたシニア男性](/mwimgs/e/6/670/img_e66f62d083d04b61ef5c492765a84702278723.jpg)
75歳以降は身体機能が衰え、病気のリスクも増える
私の専門分野である骨粗鬆症のほかにも75歳を境に変わる病気のリスクは多くある。高血圧や糖尿病といった生活習慣病、動脈硬化による血管障害、整形外科の領域でいえば腰部脊柱管狭窄症や変形性の股関節やひざの関節症など、加齢に伴う血管や臓器をはじめとする体の機能の衰えが原因で起こる病気は数多くある。
内閣府の調査では、要介護・要支援の認定を受けた人の数は増加しており、とくに75歳以上でその割合が高くなると報告されている。
また、認知症では、中年期は肥満がリスク因子の一つになるが、75歳以上では反対に、体重減少が引き金になるという報告もある。ほかにも、75歳以上になると、一つではなく複数の病気を併せ持つことが多くなる、治療で使用する薬の副作用が生じやすくなるなどの変化も起こる。
病気になると完全には回復せず、要介護のリスクも上がる
さらに、75歳未満では、一つの病気があっても治療をして良くなれば回復し、病気になる前のような生活に戻り、仕事にも復帰できることが多い。しかし、複数の病気を併せ持つようになり、体のさまざまな機能が低下する75歳以上になると、一つの病気を治療しても回復せず、反対にかえって身体機能が下がり、要介護や死亡のリスクを高めてしまうことも少なくないのだ。
このような高齢者特有の身体的な状態を鑑み、高血圧については、近年のガイドラインで75歳以上の高齢者の降圧目標がやや緩めに設定されている。高齢者でも血圧を下げる治療は必要だが、それぞれの体の状態や生活背景に応じた検討が必要と考えられているのだ。
一方で、糖尿病に伴う高血糖は、65〜74歳では心臓や血管の病気による死亡リスクを高めることがわかっているが、75歳以上になると、高血糖に起因する死亡リスクは74歳以下までと比べて軽度となるという研究結果がある。脂質異常症についても、65〜74歳ではLDLコレステロール値が高いことが心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスク因子になるが、70歳以上を対象とした研究では、LDLコレステロール値が高いことと冠動脈疾患の発症には関連性がないとされる報告が多い。