■聖心女子学院初等科・中等科・高等科校長 大山江理子先生

成長の段階を実感できるものって、印象に残るものですね

私はシスターですので子供はおりません。ここでは、私が子供のころ、父母からもらった贈り物をご紹介します。それは今も大切にしている万年筆です。

小学校5年生か6年生の誕生日か何かのときだったでしょうか。父母が相談して、「そろそろこういうものを使ったら」という意味でくれたのだと思います。私はそのとき、大人扱いしてもらった、これから大人の世界に入っていくんだなと、とても嬉しかったことを覚えています。

ずっと愛用している万年筆。小学生のころ、これを使うことで「大人になった気分」になっていました。
ずっと愛用している万年筆。小学生のころ、これを使うことで「大人になった気分」になっていました。(出典=『プレジデントFamily2025冬号』)

母は自分でもよく万年筆で、さらさらと手紙を書いていました。特にお礼状を書くことをとても大切にしていましたね。その姿を見ていましたから、万年筆をもらうことで、私も大人になっていくんだなあと思ったのです。

もらってすぐ、万年筆を使ってみました。最初はなかなかうまく書けませんでしたが、大人のものを使うのが嬉しくて、鉛筆で書けばいいところを万年筆で一生懸命、書いていました。

成長の段階を感じられるプレゼントって、印象に残るものですね。もっと小さいころ、自転車を買ってもらったことも覚えています。三輪車を卒業して、次のステップにいくんだなあと。

大山江理子氏
大山江理子氏(出典=『プレジデントFamily2025冬号』)

大人になってからも、母を見習って、手紙を書くことを大切にしています。

最初は横書きが多かったのですが、母のように、さらさらと縦書きすることに憧れがあって、いつごろからでしょうか、私も縦書きになりました。

ある日、思い立って母に縦書きの手紙を送ったことがあります。母から、「あなたもこういうのが書けるようになったのね」と言われて、温かい気持ちになりました。そのときの文字が、母の字に似ていたことも、ちょっとくすぐったい思いになりました。