骨代謝マーカーでわかること

骨粗しょう症の検査で調べるのは主に「骨形成マーカー」「骨吸収マーカー」「骨マトリックス関連マーカー」の3種類で、「骨吸収マーカー」の値が高い場合には、骨密度の減少速度が速く、骨密度の低い高齢者では骨折リスクが高くなります。

このような症例には骨吸収を「抑制」するような薬剤が必要になります。逆に骨吸収マーカーが基準値以下に低下している場合には骨代謝を刺激して「骨形成」を高める薬剤が必要になりますが、日本ではまだ使用できません。

一方、骨形成マーカーは骨吸収に刺激されて開始されるため、骨形成マーカーが単独で高い値になることはあまりありません。

そして骨マトリックス関連マーカーは、悪玉架橋であるペントシジンの量など、骨の質を推定するのに役立ちます。

骨代謝マーカーでわかることは以下の通りです。

●将来の骨量減少の予測
●急速な骨量減少者の早期発見
●骨質の評価
●骨粗しょう症の危険性の予知
●治療開始時期の目安
●治療効果のモニタリング
●治療薬の選択
●治療効果の早期判定
●適正な薬剤量の判定
●適切な服薬方法の確認
●骨折の予知
●他の骨代謝性疾患との鑑別

骨の形成スピード、分解スピード、悪玉架橋の量もわかる

骨代謝関連マーカーの検査には、以下の3つの分類があります。「骨形成マーカー」「骨吸収マーカー」「骨マトリックス関連マーカー」それぞれで、骨の形成スピード、分解スピード、そして骨の悪玉架橋の量を調べます。

〈骨形成マーカー〉

●オステオカルシン(OC)★★
骨を形成する「骨芽細胞」が産生するホルモン物質。

●骨型アルカリホスファターゼ(BAP)★★
骨が壊れたところを骨芽細胞が修復するときに増加する物質。

●トータルI型プロコラーゲン-N-プロペプチド(total P1NP:ピー・ワン・エヌ・ピー)★★★
骨が新しくつくられる過程で生成され、血液中に放出される代謝物質。


〈骨吸収マーカー〉

●デオキシピリジノリン(DPD)★★
●I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)★★
●I型コラーゲン架橋C-テロペプチド(1CTP)★★

骨芽細胞のコラーゲン産生量や分解量が推定できる。

●酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b)★★★
非常に鋭敏な破骨細胞活性のマーカー。


〈骨マトリックス関連マーカー〉

●低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC) ★★
骨中ビタミンK不足のマーカー。

●ペントシジン(実用化を目指し、研究・開発中のため推奨はつけず)
悪玉架橋の本体「AGEs」の代表的な物質。ペントシジンが多いと、悪玉架橋が増加して、骨粗しょう症が進行していると推定される。

●ホモシステイン(HCY)(実用化を目指し、研究・開発中のため推奨はつけず)
ビタミンB群の不足によって蓄積される物質。血中ホモシステインの濃度が高いと、酸化ストレスによってコラーゲンの架橋に異常が起きており、骨折リスクが高まっていると推定される。