働く世代が減る「人口オーナス」の変化
しかし、わが国の人口は2008年をピークに減少の一途をたどり、生産年齢人口(15歳から64歳)の割合が従属人口(14歳以下と65歳以上の人口合計)の割合に対して相対的に少ない「人口オーナス」状態が世界でもっとも顕著となっている。
人口オーナスになると、消費が活発な働き手が減ることで消費が落ちたり、1人あたりの社会保障費の負担が増加したりするため、経済成長を阻害するとされている。
日本の人口オーナス期入りは人口ピークよりさらに早く、1992年の69.8%を境に生産年齢人口は年々減少を続け、2020年には59.8%にまで減っているのだ。
すなわち、今や「若い労働力」というだけで希少価値、という時代に突入しており、豊富な労働力を前提に回っていた社会のさまざまな仕組みが回らなくなり、今まで若い店員さんが対応してくれていた業務は、自動発券機、自動配膳ロボット、そして自動精算機に置き換わりつつある。
持続可能な「選ばれる会社」になるために
ただでさえ少人数で対応しないと運営が回らない店舗では、店員さんを呼びつけて「この機械の使い方分かんないんだけど‼」と文句を垂れて手間をかけさせる客や、ましてや暴言や怒号、理不尽クレームをつけるような客はどんどん切られていくことになるだろう。
少なくとも、「どうしても生身の人に対応してほしい」と願うのであれば、長い行列に並んだり、「リアル人間対応手数料」といった追加費用を負担したりする覚悟を持つ必要が出てくるかもしれない。
しかも23年9月からは、精神障害を労災認定する時の心理的負荷の基準に、新たに「カスハラ」(顧客から従業員に対する理不尽なクレームや言動)も盛り込まれるようになった。
人手不足が深刻化し、人材確保の難度が劇的に高まっている時代、組織がいかにして従業員の心身の健康を守り、安全な労働環境を提供できるか否かは、今後重要な「会社選びの基準」となっていくであろうし、客側もサービス提供側のこのような変化に対応していかなくてはならないのだ。
百貨店の年始営業休止や、コンビニエンスストアの深夜休業・時短営業の動きは、日本社会に対して「われわれはどのような社会を目指すのか」という大きな問いを投げかけている。
「常に便利で快適なサービスを求める社会」と「労働者の権利と健康を尊重する社会」という相対する価値観のバランスをとるためにも、われわれ一人ひとりが消費行動を見直し、社会全体が協力して、健全で持続可能な労働環境を作り出し、維持していく必要があるだろう。