高齢者のBMIは「22」にこだわらなくてもいい
ここ20数年の私の健康は、先述したアパート暮らし時代の生活習慣がベースとなっています。当時から、BMIを計測しながら、摂取するエネルギー量を調整したうえで食事を用意していました。
BMIは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割ることで求められます。たとえば、身長が1.7メートルとして、体重が60キログラム、65キログラム、70キログラムの3つのケースを計算してみましょう(1.7の2乗は2.89)。
65キログラムの場合:65÷2.89=22.49
70キログラムの場合:70÷2.89=24.22
多くの医師はBMIを指標とするとき、「22」を基準と考えているのではないでしょうか。私は、必ずしも「22」にこだわる必要はないと考えています。
40歳〜59歳の日本人の男女それぞれ2万人ずつ、10年間追跡した研究によると、やせているよりもむしろ肥満のほうが死亡率は低くなりました。それは自治医科大学の研究(図表6)でも同じで、BMI=25.0〜29.9で全死因、心疾患、がんの死亡率が低くなっています。
ただ、「29」というのは高すぎますから、40歳〜59歳の男性の場合、「23」か、それを少し超えるくらい、女性の場合は幅がありますが、「19」〜「24.9」くらいの幅で考えればよさそうです。
「精神力がタフな人」は長生き
私は現在、降圧剤を飲んでいます。実は、ベストセラー『九十歳。何がめでたい』(小学館)の著者である佐藤愛子さんも2019年に発刊された『気がつけば、終着駅』(中央公論新社)の中で、降圧剤を飲んで血圧を測っているとお書きになっています。
佐藤さんが生まれたのは1923年ですから、私よりも9歳先輩になります。佐藤さんは『九十歳。何がめでたい』の43頁で、読者に「佐藤さんの様に強く生きるコツを教えて下さい」と聞かれ、「そんなものあるかい」と答えながらも次のように語っていらっしゃいます。
「暴れ猪になって突進する」
本書では宗教家が極端に長生きなのは「精神力」が影響しているのではないかとお伝えしています。
佐藤さんのようにタフな精神力を持って生きていると、神経活動を介して心身の活動が増すことによって、脳の神経細胞は高齢でも増殖し、免疫力を高めるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が増えるとともに、脳の指令でmRNAを介して、テロメア(編集部注:DNAの先端にある“寿命の回数券”とも呼ばれるもの)を伸長させる酵素であるテロメラーゼの活性を高めることが、ハーバード大学医学部で確認されています。
実はこのテロメアの長さを保つのが、私の健康法の特色である「葉酸」と「DHA」の摂取なのです。
1つ、恐れ多くも先輩に対してご提案するなら、佐藤さんは著書『九十歳。なにがめでたい』の中で「死ぬ前に食べたいものは?」という質問に対して「今でさえ食べたいものなんか何もないので死ぬときに食べたいものがあるはずはない」とおっしゃっています。
この点については、長年、栄養学に携わった人間としては一言言わざるを得ないわけですが、いくつになっても、バランスのよい食事をすることは元気に暮らす条件の1つですし、おいしいものを食べて喜びを感じることは、心身の健康によい効果をもたらすことになります。