昼食に食べるのは「魚」
朝食の話が長くなりましたが、大学に出勤する日はできる限り、学食で昼食をとるようにしています。女子栄養大学の学食の中でも、私がよく選ぶのは魚中心のA定食です(B定食は肉中心)。
その理由は、日本人の多くは遺伝子的に脂肪酸のアルファリノレン酸をDHA(ドコサヘキサエン酸)に変えることができない体質であり、DHAが不足しがちになるためです。(写真1)
具体的には、私も含めて日本人の6割はFADS1と呼ばれる遺伝子のC多型を持っており、そうではない人たちに比べて、DHAを多く含む魚類を多く摂取することが健康を維持するために必要になります。
理想的な魚の摂取量の目安は1日100グラム。魚のなかでも、脂ののった魚がおすすめで、そのくらいの量を摂取することで、EPA(イコサペンタエン酸)や前出のDHAなどの脂肪酸を摂取でき、脳の健康を健やかに保つことができると考えられています。
しかし、日本人の魚の摂取量は減少の一途を辿り、2019年には50グラム(中央値)となり、1990年代と比べると半分に減ってしまいました。図表3は2004年(平成16年)以降の魚介類と肉類の1日の1人あたりの摂取量の推移を表したものになります。
「魚離れ」しているなら、魚を食べればいい――。それはそうなのですが、日本の漁獲量は、1984年の1282万トンから、2022年には289万トンにまで減少しており、昔は安価で手に入ったサンマやイカなどが値上がりしていたりもします。
もはや手軽に摂取できる食べ物ではなくなりつつあるのです。サプリメント等の活用を検討するのも選択肢の1つです。
健康長寿には「葉酸」も大事
また、学食のごはんにはビタミンB群の一種である「葉酸」が通常より多く入っている米が使われ、必ず食べるようにしています。これは私の研究成果をメニューに反映してもらったものなのですが、健康長寿にはこの葉酸の摂取も非常に大事だと私は考えています。
その理由は、日本人の約6割は葉酸の欠乏しやすい遺伝子(正確にはメチレンテトラヒドロ葉酸の多型)を持っていると言われ、日頃から補う必要があるからです。もし欠乏すると、認知症や脳卒中、うつ病などの疾患に繋がるリスクがあるとも言われています。
かつての食卓には海苔や枝豆、緑茶といった葉酸の多い食べ物が当たり前のように並んでいましたが、現代では日常的に摂取しているという方は少ないのではないかと思います。
私の指導する「さかど葉酸プロジェクト」では、2006年から市民に対して葉酸に着目した健康づくりの取り組みを行っています。同市は肥満率や高血圧、2型糖尿病、脂質異常症といった複数の代謝異常の罹患率が減少し、医療費削減に繋がったという結果もあります。
ぜひ皆さんにも、日頃から葉酸を意識した食事を心がけてほしいと思います。