どうすれば転売ヤーはいなくなるのか

――今後の日本でもし転売ヤーが衰退することがあるとしたら、どんなキッカケが考えられるでしょうか。

やっぱり日本の転売市場の裏には中国の影が存在しています。中国人の間で、「転売屋から商品を買うのってファンとしてどうなの?」と疑問視する風潮が生まれれば、急速に転売ヤーの需要が減っていくと思うんです。これだけ聞くと夢物語みたいに思えるかもしれませんが、実は15年ほど前には「偽物」を巡って同じことが起きているんです。

一時期、中国では「偽物」の商品が横行したことがありました。当時の中国人は、「偽物でもなんでも構わない」といった国民性だったんですが、次第に偽物の商品を持つことに恥ずかしさを覚えるようになり、偽物の商品が市場からだんだん消えていきました。そのときと同じように「転売ヤーからではなく正規ルートで買った商品じゃないと価値がない」という価値観が生まれる可能性はあると思うんです。

転売ヤーにただ怒るだけでは何も解決しない

――では、日本人のほうは転売ヤーに対してどんなスタンスでいるのが望ましいと考えますか。

奥窪優木『転売ヤー 闇の経済学』(新潮新書)
奥窪優木『転売ヤー 闇の経済学』(新潮新書)

実際に自分の欲しい商品が転売ヤーによって買えなくなってしまったファンが怒るのはわかるのですが、日本の場合、まったく関係のない人まで転売ヤーを目の敵にしている印象があります。たぶん日本人は「労せずに儲ける」ことに嫌悪感を抱きやすいのかと。転売ヤーは右から左に商品を流すだけで儲けているイメージがあるので、腹が立つのかもしれません。

日本にはかつて「一億総中流社会」と呼ばれた時期がありましたが、今はもはや「格差社会」になっています。転売市場は金を持っている人間が財力で他人から商品をぶん取る……という図式なので、そこに格差社会の側面を見いだしてしまい、アレルギー反応を起こしているのだと思います。でも、転売ヤーも労せずに儲けているわけではない。

ただ、「転売ヤーだって苦労しているんだから理解してあげようよ」と言うつもりはありません。おそらく日本人の多くは、転売ヤーという人たちの実態がわからないまま怒っているんだと思うんです。彼らの実像が見えないままやみくもに怒っているだけでは、いつになっても問題は解決しないのではないでしょうか。

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