「鋼のメンタル」でも今回は分が悪い

職員に対する一連のパワハラ疑惑やおねだり疑惑で、斎藤知事は自らの正当性を主張した。

その上で、元西播磨県民局長による告発、自死に端を発した兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)で、斎藤知事は「道義的責任が何かわからない」ととぼけてしまった。

倫理的な個人の問題である「道義的責任」を認めれば、2人も職員が亡くなっているという重大な事実から厳しい政治責任を取らなければならなかったからである。

その結果、県議会すべての議員86人による全会一致の不信任決議を突きつけられたが、県議会解散ではなく、自動的に身分を失う「失職」を選択した。

「県民のために」を掲げて再出馬し、折田氏らによるSNS戦略が功を奏して、若者・Z世代の支持を取りつけ、約111万票を得て圧勝した。

選挙戦を通して、いじめられ役を演じるなど、斎藤知事が逆境に負けない「鋼のメンタル」の持ち主であることを県民らにはっきりと示した。

ただ今回の場合、このままではどう考えても公選法違反の疑いをきれいさっぱり打ち消すのは極めて難しい。

公選法の買収罪違反で罰金以上の刑が確定すれば、5年間の公民権停止となり、今度は正真正銘の「知事失格」となってしまう。それだけに、火消しに必死である。

いまのところ、斎藤知事は公選法違反を全面的に否定し、相変わらず正当性を主張している。

もし、裁判に付されることになっても、そのまま逃げ続けていれば、2期目の任期4年を全うすることはできるかもしれない。世論の激しい批判に耐えられる「鋼のメンタル」の持ち主であることは実証済みだからである。「鋼のメンタル」だけで本当に、斎藤知事が逃げ切ることができるのか、検証していく。

撮影費用、ヘアメイク代はどう処理されたのか

折田氏のnote投稿について、新聞、テレビ、ウェブメディアなどは連日、さまざまな角度から公職選挙法違反の疑いについて追及している。

筆者は、これまでメディアが取り上げていない内容を紹介したい。

斎藤陣営は、折田氏の広報・PR会社メルチュに報酬71万5000円を支払っている。その内訳は①公約スライド制作30万円、②チラシデザイン制作15万円、③メインビジュアル企画・制作10万円、④ポスターデザイン制作5万円、⑤選挙公報デザイン制作5万円(合計65万円)と消費税(10%)6万5000円である。

折田氏は、noteへの投稿「1.プロフィール撮影」で、大阪にプライベートスタジオを持つ信頼できるカメラマン、友人の紹介によるヘアメイクを依頼した、と投稿している。いくら何でもカメラマン、ヘアメイクはボランティアではなかろう。

スタジオで写真撮影をする人
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです

折田氏のメルチュから、カメラマン、ヘアメイクに費用を一旦立て替えた上で、その費用を含めて斎藤陣営に請求するのが一般的である。カメラマン、ヘアメイクの費用はそれなりに高い。

ところが、①から⑤には、カメラマン、ヘアメイクの費用は含まれていない。どのように処理するのだろうか。