文字を読んだり書いたりすることが苦手な日本の小学生は約7~8%、40人クラスに2~3人いると言われている。この「発達性読み書き障害」の当事者である言語聴覚士の関口裕昭さんは「僕の場合、何度か病院に通っても文字が苦手な理由はわからず、ようやく診断書を受け取ったのは高校2年生になる頃だった」という――。

※本稿は、関口裕昭『読み書きが苦手な子を見守るあなたへ 発達性読み書き障害のぼくが父になるまで』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

ひらがなが書かれたたくさんの紙と机
写真=iStock.com/Hanasaki
※写真はイメージです

高校はじめての授業で先生に叱られた

高校生活の授業初日、人生を一変させる事件が起きます。

その日のいちばん最初の授業は国語。現代文。

いちばん前の席だった僕は、たまたま最初に音読を指名されます。初見の文章。緊張する僕に、クラスメイトの視線が集まります。

そこで僕は何度も止まり、読み間違え、止まってはまた間違え、ボロボロの音読をしたのです。

「この学校に来て、その音読はなんですか?」

先生からそう叱責されました。

この学校……というのは、僕が進学したのが地元の進学校だったからです。

僕は、生徒会や野球部副部長、クラス委員をしていたため内申点がよく、また、努力に努力を積み重ねた結果、定期テストの点数はそれなりに取れていたため、公立の進学校に入学できてしまったのです。

3教科の試験を受ける私立であれば、同じレベルの高校に入れなかったでしょう。

中学までの勉強法では太刀打ちできず

とはいえ、その学校は自分が望んで入った高校だったので、最初の授業を受けるまでは、入学できたことを嬉しく思っていました。

家からも近い、伝統のある公立校で、何より自分が入りたいと思っていた男子校。

そこで、「音読すらできない」とみんなの前で叱られたことで、僕は「勉強ができない」というレッテルを貼られたと思い込み、一気に自信をなくしてしまいました。先生やクラスメイトからそれについて何か言われたわけではなく、自らそう思い込み、自分で殻に閉じこもってしまったのです。

音読ができないのは恥ずかしいことだと僕自身が思っていたから。

できないのは努力不足だと自分に言い聞かせて勉強しましたが、それにも限界がありました。高校では、中学までの勉強法は通用しません。

これまで基本的に丸暗記をしていた教科書も、情報量が多く、到底暗記はできません。

漢字やスペルにひらがなでふっていたルビも、多くてそれだけで勉強時間が終わってしまいます。最初はマルがあって、ここがとがってて……となんとなく形で覚えていた英語は、単語数が増え、似た形が出てきたため判別できなくなりました。「different」と「difficult」では山の形がどう違うかで判別していたのですが……わからなくなるのも当然ですよね。