2011年4月に小学校学習指導要領が改訂となり、理科教育の目標として「自然に親しみ、見通しをもって観察、実験などを行い、問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに、自然の事物・現象についての実感を伴った理解を図り、科学的な見方や考え方を養う」と「実感をともなった理解」を重視するようになったことも、こうした論述や図示の問題が増えている一因だ。
さらに、来年以降、中学入試理科の記述問題のトレンドとなると松谷さんが予測するのが「仮説展開型」と呼ぶ出題形式だ。
「例えば、砂糖よりハチミツが好きなチョウがいると仮定して、それを証明するにはどんな実験をして、いかなる結果が導き出せればいいか、といったことを答えさせるような問題です。人を説得するだけの知識力と論理力に裏付けされた科学者としての視点が問われます」(松谷さん)
そうした総合的な理科の論理力を鍛えるために、家庭でできることは何か。
「こうした問題を解く前に子供たちには、問題文をお父さんやお母さんとの会話だと思いなさいと伝えています。親御さんは日常のなかの不思議を子供にどんどん問いかけてやってください。普段から、なぜ、リモコンを壁に向けてもテレビの操作は可能か。なぜ、吸盤は付着するか。答えを初めから与えるのではなく、子供に調べさせ、説明させる。また、TVなどで放送している科学番組を録画するのもいいでしょう。単に映像を再生するだけでなく、時々停止ボタンを押して、番組内の実験の結果がどうなるか、などを子供に考えさせたり、わかったことを説明させてみる。そうすることで、詰め込み教育よりは遠回りになりますが、知識と知識が頭の中でつながっていく下地ができる。そうやって知識の“点”がつながって、あるときそれらは“線”に、そして“面”になり、今回のドラえもん問題のようなユニークな出題でも受け止められる科学的な思考ができるようになるのです」(松谷さん)
一部では批判の声まで出た「ドラえもん問題」だが、奇をてらって出題された問題ではなかった。「こんな子に教えたい」という名門校ならではのメッセージが込められていたのである。
※設問文は一部省略しています。