毎年契約を更新して勤続10年の契約社員Aさんの悩み。「正社員と同じ仕事をしているのに、給与は半分。正社員には出ている通勤手当も出ない……」。

総務省の統計によると、契約社員、パート社員、派遣労働者等の非正規労働者が労働者全体に占める割合は、35.2%と過去最高となった(平成23年男女平均)。この非正規労働者の大半が、雇用の期間を数カ月や数年と定められた有期契約の労働者だ。「有期」とはいっても、更新によって勤続年数が5年、10年と長期に及ぶ者も少なくない。

正社員と非正規労働者の年収分布を比較すると、前者が200万円から999万円の層に幅広く分布しているのに対し、後者はその80%近くが100万円から299万円の層に集中しており、その差は歴然だ。

もっとも、非正規労働者の多くは就業場所や従事する業務の内容等を限定され、短時間勤務のこともあるので、会社の命令で転勤や配置転換、業務内容の変更等がなされる正社員と単純に比較することは難しい。

ただ、非正規労働者の給与は労働者の能力や勤続年数よりも業務内容にリンクするため、正社員のように昇給という概念がない。そのため給与は頭打ちとなり、Aさんのような不公平な事態は起こりやすい。

このような事態を受けて、12年8月10日、労働契約法の改正がなされた。第20条を新設して、会社が有期契約であることを理由に不合理な労働条件を定めることを禁止したのだ(施行日は13年4月1日となる見通し)。これによって、同一の会社内では、正社員と有期契約の非正規労働者との間で、「労働条件」、つまり給与や労働時間、服務規程および教育訓練の適用、福利厚生等の一切の待遇について、不合理な格差を設けることはできなくなった。

格差が「不合理」かどうかは、(1)業務の内容、(2)これに伴う責任の程度、(3)転勤等の人事異動の有無とその範囲、また業務内容や責任の程度について変更がありうるかとその範囲、(4)労使間の慣行その他の事情という4つの観点から判断される。