特定の候補者への攻撃も目立った。
千葉5区の自民党候補は「○○○○は二重国籍だ。中国のスパイに違いない」とバッシングを受けた。
ターゲットにされた陣営は、ネットで「事実に基づかない荒唐無稽な偽情報」と反論したが有権者に十分に伝わったとは言えず、当の候補は小選挙区で落選。どうにか比例で復活当選を果たし議席は守ることができたが、釈然としない闘いとなった。
短期決戦の選挙戦では反論もままならず
一方、野党の候補者を誹謗中傷するSNSも出回った。激戦となった東京24区で、何者かが野党の候補者になりすまして「小学生への性行為を容認する」という趣旨を書き込んだ投稿の画像が流布された。
結果は、裏金問題で矢面に立って自民党を非公認となった候補が辛勝。なりすまし被害を受けた野党候補は、かろうじて比例で復活することができた。
いずれの投稿も、後に、日本ファクトチェックセンター(JFC)の調査などにより「偽情報=誤り」と判定された。
だが、どの陣営も一様に、短期決戦の選挙戦の最中に「いちいち反論していられない」と嘆くほかはなく、なすすべはなかった。偽情報を流して対立候補を陥れた者が有利な選挙戦を展開したとなれば、「あることないことを発信したものが勝ち」という歪んだ構図がまかり通ったのである。
衆院選は結局、自民党も公明党も大きく議席を減らし、15年ぶりの敗北を喫することになったのは周知の通りだ。
兵庫県知事選で注目されたSNSの偽情報
ついでに言えば、先日の兵庫県知事選では、本命とみられていた稲村和美候補に対し「外国人に参政権を与えようとしている」といった偽情報や真偽不明の投稿がSNSで一気に拡散、マイナスイメージが植え付けられた。
反面、SNSを通じて「斎藤氏はパワハラをしておらず、新聞やテレビは根拠なしに報じている」という言説が拡散、若年世代を中心に斎藤前知事への支持が急速に広がり、逆転勝利につながったといわれる。
いずれも、JFCは「真実ではない」と断定した。つまり偽情報だったのである。
敗れた稲村氏は「候補者が何を信じるのか、どのような情報に基づいて投票行動を決めるのかという点で課題が残った選挙だった」と悔やまざるを得なかった。
多くの人が信じた偽情報が真実として受け取られかねない「SNS選挙戦」が展開された衝撃的な事例として記憶に残るに違いない。