「マスメディアの敗北」とは、何に対する勝ち負けなのか
産経新聞は、「斎藤氏の再選はマスコミの敗北、SNSの勝利か 兵庫県知事選 米トランプ氏報道との符合も」と題した記事を18日に配信している。NHKも、「再選への原動力になったとも言われているのが、SNSでの発信です」と報じている。
NHKの出口調査によれば、「投票する際に何を最も参考にしたか」との問いに対して「SNSや動画サイト」と答えた人が30%と、テレビや新聞(ともに24%ずつ)を上回っているから、兵庫県民が、「マスメディアよりもSNSを重視した」という変化はあったのかもしれない。
斎藤氏自身は、当選から一夜明けた記者会見で次のように述べている。
ほとんどの人が、この斎藤氏の発言の通りなのではないか。新聞だけでも、テレビだけでも、あるいは、ネットだけでもない。もとより、「ネット」のなかには、新聞社発の記事も、テレビ局発の動画も、山のようにある。
それなのに、わざわざ「マスメディアの敗北」と、それも、マスメディア自身が表現するのは、なぜなのか。もとより、「敗北」とか「勝利」というのは、何に対する勝ち負けなのだろうか。
米国大統領選・東京都知事選との共通点
産経新聞の記事の見出しにあるように、先ごろ行われた米国大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の立場を、斎藤氏は彷彿とさせる。どちらも、マスメディアからのバッシングとも思える強い批判を受けながら、選挙では圧勝したからである。
マスメディアの論調では、斎藤氏もトランプ氏も、どちらも当選させてはいけないかのように報じられた。にもかかわらず、ネット世論では、両氏はともに熱狂的とも言える支持を集め、対立候補を寄せ付けなかった。
東京都知事選にも通じている、との見方もできよう。
7月7日に投開票された都知事選では当初、蓮舫氏が小池百合子氏に迫ると思われていた。ふたを開けてみると、選挙戦序盤は泡沫候補扱いすらされていた石丸伸二氏が得票数で上回った。石丸氏も、マスメディアには黙殺というか無視に近い冷遇を受けたのに、ネット上での支持が躍進に寄与したと言われている。
こう考えると、今回の斎藤氏の再選は、世論をつかみきれなかったという意味で「マスメディアの敗北」であり、「SNSの勝利」と言えるのかもしれない。
けれども、それだけでは、県民が斎藤氏を強く支持するようになった理由をつかみ損ねるのではないか。