「年収103万円の壁」を178万円に拡大する
いわゆる「年収の壁」の1つ、「年収103万円の壁」が今、大変ホットな政治問題になっています。
10月の衆院選で自民・公明両党が過半数割れし、国民民主党が躍進を遂げた結果、国民民主党がかかげている「手取りを増やす」「年収の壁を見直す」という公約が、俄然、現実味を帯びてきたからです。
国民民主党は、「年収の壁」の1つ、103万円の基準を、178万円に引き上げるよう主張しています。
これに対し、「重要なのは103万円ではなく、106万円や130万円の壁だ」「得するのは学生バイトだけで主婦には恩恵がない」といった声も出ていますが、実際のところ、どうなのでしょうか。
この問題については動画でもすでに取り上げましたが、今回、プレジデントオンラインでもあらためて解説していきたいと思います。
結論から言ってしまいますと、「得するのは学生バイトだけではなく、パートの配偶者含め、働く側にとってはメリットしかない」というのが筆者の意見です。
念のため申し上げておきますが、筆者自身は、政治にはできるだけ絡みたくないバリバリの無党派層です。本稿では、次の3つのケースに分けて、筆者がシミュレーションした結果をお伝えしますが、あくまでも中立的な立場であるということは強調しておきたいと思います。
②成人の扶養家族の年収の壁はどうなるのか?
③学生バイトの年収の壁はどうなるのか?
そもそも「年収103万円の壁」とは
まず「年収103万円の壁」についておさらいしておきましょう。
扶養されている家族がパートやアルバイトで働くとき、一定の年収を超えると、税金や社会保険料などの負担が発生します。こうした負担で手取り収入が減るのは損ですから、この「壁」を超えないよう働く時間を調整しよう、という人も出てきます。これが「年収の壁」と呼ばれる問題です。
いくつかにわけられる「壁」の中で、所得税がかかる基準となるのが「年収103万円の壁」です。103万円とは、基礎控除の48万円に給与所得控除の最低額55万円を足したもので、この数字は、30年ぐらい前からずっと変わりません。
なぜ国民民主党が今、「103万円を178万円に引き上げなさい」と言っているかというと、「30年前の最低賃金と今の最低賃金を比べたとき、約1.7倍になっているので、基礎控除もそれに応じて上げるべき」ということのようです。