切り札は最新鋭のバスケット養殖機

機械化の切り札が最新鋭のバスケット(かご)養殖機だ。日本で普及している垂下式養殖と違い、いかだやロープは不要だ。

クレールオイスターを育てるためには、カキを一粒ずつばらして養殖する「シングルシード(一粒の種)式」を採用する必要がある。そうすることによって形やサイズが均一の高級市場向けの生食用カキを生産できる。

垂下式であると、ロープに吊るしたホタテ貝の殻1枚に数十個の幼生(カキの赤ちゃん)が付着するため、成長するにつれてカキ同士がせめぎ合って均一にならない。

幼生から成長したカキの稚貝
撮影=プレジデントオンライン編集部
幼生から成長したカキの稚貝

シングルシード式に最適なのがバスケット養殖。カキはバスケットの中で個別に管理され、お互いに密着することなく育つ。

ただ、バスケット養殖もそれなりに肉体労働を伴う。その意味では垂下式養殖とあまり変わらない。厳格な品質管理が求められる高級市場向けとなれば、なおさらである。

海面にバスケットを設置している養殖場があるとしよう。この場合、現場のスタッフは定期的に海の中に入り、無数のバスケットを手作業で管理しなければならない。歩留まりを上げ、品質を保つために。

フランス流「オイスター革命」を導入

そこでファームスズキが導入したのが「ロールオイスター」だ。フランスのベンチャー企業SEADUCER(シーデューサー)が開発したバスケット養殖用マシンである。

ファームスズキの養殖池に設置されている「ロールオイスター」
撮影=プレジデントオンライン編集部
ファームスズキの養殖池に設置されている「ロールオイスター」

SEADUCERが設立されたのは2019年。同社は養殖だけでなく機械工学やコンサルティングに強い人材を集め、カキ養殖業界でイノベーションを起こそうとしている。

2022年春にはSEADUCERはアイルランドの養殖専門サイト「フィッシュサイト」で特集されている。そこには「フランス流オイスター革命」との大見出しが躍っていた。

SEADUCERという社名はフランスらしくおしゃれだ。「sea(海)」と「seduce(誘惑する)」を組み合わせてある(欧米には古くから「カキには媚薬効果がある」との言い伝えがある)。

ファームスズキでロールオイスターの導入が始まったのは昨年10月。半年足らずで合計256個のかごが稼働し、それぞれが養殖池内で10キログラム前後のカキを育成する体制になった。