「インディアン」は植民地主義的?

ドイツでは昨今、一部左翼による言葉狩りがますます激しくなっており、「インディアン」も使ってはいけない言葉となっている。

例を挙げれば、21年3月、緑の党のベルリン支部総会の際、トップの女性政治家が「子供の頃の夢は、インディアンの酋長になることだった」と言ったのが党員から攻撃され、後日、涙ながらに謝罪するという一幕があった。記録ビデオからもその部分は削除された。

昨今のドイツではこの類の左翼思想が大手を振っており、フンボルト・フォーラム側も、「インディアン」という言葉は一部の人を傷つける可能性のある差別的、植民地主義的な言葉であるから使うことはならないと主張したわけだ。

では、フンボルト・フォーラムとは何か? これは、2020年にベルリンのど真ん中にオープンした総合文化施設で、ヨーロッパ以外の芸術品、工芸品を集めた美術館と博物館の他、さまざまな文化イベントの場になっている。ただ、実はベルリンは政治的に真っ赤な都市で、ドイツの芸術界、エンターテインメント界も、現在、完全に左翼の牙城となっているため、フンボルト・フォーラムも思い切り左に振り切れている。

大昔の童話や小説が書き換えられている

しかも、文化を司っているのがクラウディア・ロートというガチガチの緑の党の古参議員だから、文化における極左のイデオロギーには歯止めがかからない状態だ。今では、大昔からの童話も、近年の文学作品も、次々に書き換えが進んでいる。

児童文学の『長靴下のピッピ』でさえ、「私のパパは土人の王様」という“差別用語”のため、すでにアウト。そして、40年前に東ドイツで禁止された『パンコー行きの特別列車』が、今、また、皮肉にも、検閲に引っかかっているわけだ。

ただ、今回のリンデンベルクソングのキャンセルに関しては、あちこちから無視できないほど反対の声が多く上がった。たとえば、やはり少し懐メロっぽいが、かつてのバンド「BAP」のボーカリストで、今も唯一活躍しているヴォルフガング・ニーデッケンが、「どんな形であっても検閲には反対」、「リンデンベルクを“差別主義”や“植民地主義”と結びつけるとはあまりにもバカげている」と抗議。

ちなみに、彼は自分の著作に、子供の頃の思い出として、「カウボーイとインディアンごっこ」を書いたところ、他のロックバンドの女性から、その文章を削除するように求められたという。