感謝の気持ちを伝え、相手の気持ちを落ち着かせたほうが良い

その上で相手の要求を6W3H(6W=いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・誰に、3H=どのように・いくらで・どれだけ)を使って把握しながら、事実確認をしていきます。ただし、「お客様のおっしゃる通りです」「お気持ちよく分かります」などの言葉は、相手の話をよく聞いてから使わなければなりません。

場合によっては全面的に要求を認めたと捉えられて、「さっきは非を認めていたじゃないか!」と状況が不利になるからです。そうして、対応者側に非があるのか、組織の判断基準に照らして対応が可能かどうかをしっかりと見極めて判断します。もし対応する必要がないと判断すれば、“3つのK”(感謝→簡潔な結論→感謝)を使いつつ要求には応えられないことを伝えましょう。

・切り返しフレーズ
「ご不便をお掛けし申し訳ございません。ただし、ご要望にはお答えできません」
「お忙しい中ご意見をいただき、ありがとうございました」

今回のケースはお客様も最初はダメ元で「つけてもらえないか」と買い物ポイントの付与を要求したところ、従業員が「できません」とあまりに機械的な返答したことでお怒りになってしまいました。

このような場合、怒りの引っ込みがつかなくなってしまっているだけということもあるので、「貴重なご意見をいただき、ありがとうございます」と部分的に感謝の気持ちを伝えると、相手も気持ちが落ち着きます。何度も同じ要求を繰り返してくるお客様には、対応者はきちんと説明しており、これ以上は同じ内容の話に付き合うことはできないと理解してもらいましょう。

ゲストに謝罪するホテルスタッフ
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

「5000万円を補填しろ」

弁護士によると、こういったケースで「きちんと説明はした」と、裁判で認められる目安は3回以上です。お客様の話を一度聞いただけでは、重要な要求を聞き逃してしまうこともあります。同じ内容を繰り返しお話しいただくことになったとしても、最低でも3回は相手の話を聞き、そのたびにこちらからもきちんと説明しましょう。

・POINT
はじめから相手の気持ちに共感するのはNG。「ご不便をお掛けし申し訳ございません」という点にのみ部分謝罪をし、相手に寄り添う姿勢を見せつつ、要求の内容をよく聞いて事実確認を進める。
【判断が難しいクレームの対応法】

「賠償」を求められた

ある鉄道会社で車両の整備不良によって電車が停止し、乗っていた利用客は降りることもできず、2時間ほど車内に閉じ込められてしまいました。この事故に巻き込まれたという中小企業の経営者の男性から、鉄道会社に対して後日、クレームが入りました。

「あの事故のせいで、大事な商談がパアになった! 時間通りに客先に着いていたら、5000万円の売り上げが立ったはずだ。天災なら仕方ないが、車両の整備不良は、お前たち鉄道会社が完全に悪い。車だと渋滞に巻き込まれると思って、わざわざ電車を選んだのに。この責任をとってくれ! 損失分の5000万円を補填しろ」高額な要求なので、悪意クレームと判断してしまいそうな事案です。