化学合成細菌とも光合成細菌とも共生していない普通の動物は、しかし、食物を食べなければ生きていけない。食物を探すのは大変で、小さな哺乳類は、生きるために食べているのか、食べるために生きているのかわからないくらいで、ヒミズ(体長10センチ前後の小さなモグラの一種)などは絶食して半日で餓死してしまうほどだ。

しかし広い生物界にはヘンな奴もいて、ダイオウグソクムシ(大王具足虫)は4年以上絶食しても死なないらしい。「絶食しているのは07年9月に入館した『No.1』(個体名、体長29センチ)。 09年1月にアジ1匹(約50グラム)を食べて以来、何も口にしていない」(2013年1月5日、毎日新聞)という。いったいどうなっているのだろうね。もしかしたらチューブワームみたいに、共生細菌に有機物を作らせているのかもね。

ところで人間はどのくらい絶食に耐えられるのだろう。スウェーデンで雪に埋もれた車中から2カ月ぶりに救出された人がいるという。代謝を落としクマの冬眠のような状態になれば、数カ月は絶食に耐えられるのだろうか。しかし、変温動物のダイオウグソクムシと違って恒温動物の人間が数年も生き延びるのはさすがに不可能だと思う。

池田清彦
生物学者。1947年生まれ。早稲田大学国際教養学部教授。生物学の観点から、社会や環境など幅広い評論活動を行う。著書に『ほんとうの復興』(養老孟司氏との共著)、『生物多様性を考える』『アホの極み 3.11後、どうする日本!?』などがある。昆虫採集が趣味。
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