脳トレするより、趣味や恋を楽しむほうが前頭葉は喜ぶ

脳を鍛えるというと「脳トレ」が効果的だと一般的には思われていますが、海外の研究で、実は脳トレは認知症予防には効果がないことがわかっています。

しぶしぶ脳トレを行うより、自分が心から楽しめることをするほうが、脳にはプラスの刺激が伝わりますし、認知症の進行を遅らせると私も感じています。

これまでの話にも共通しますが、幸せな気持ちは脳の活力源となります。ですから、脳を活性化させたいと思ったら、日常の中に、いかに自分が楽しめること、気持ちが高まることを増やすかをテーマにしてみてください。

趣味がほしいと思うのなら、失敗を恐れずになんでも挑戦してみたらよいですし、好きなファッションがあるのなら、「もう年だから」などと消極的になるのではなく、思う存分、楽しめばよいのです。

お金もどんどん使ったらよいと思います。自分の楽しみのためにお金を使うことは、脳の働きを活発化させるとともに、ストレスを軽減しますので、認知症やうつ病の防止、免疫力のアップにもつながります。

行きたかった土地に旅行したり、気になっていたお店に行って美味しいものを食べたり。お金を使ってそういった心華やぐ体験を自分にプレゼントすることで、心身が老け込んでいくことを防げますし、生きがいにもつながっていくでしょう。

身を持ち崩さない程度であれば、私は株やギャンブルにトライするのもおすすめしています。脳は、新たなことへの挑戦や想定外の出来事を好みますから、そういった意味では、若返りのためのよい刺激を得ることになるのです。

特に株は、常にアンテナを張って世の中の動きを見たり、売買の適切なタイミングを見極めたりと、頭をフルに回転させながら行うものですから、脳のよき運動になるでしょう。

ただ、あくまで自分がコントロールできる範囲内で楽しむということが大前提です。自分はブレーキが利かなくなってしまいそうだなという自覚のある人は、手を出さないほうが安全でしょう。あらかじめ「ここまでなら損をしても大丈夫」と限界点を決め、老後の資金をなくさないレベルで楽しめる方に限っては、多くのメリットが得られると思います。

和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)
和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)

そしていくつになっても、恋をすることは脳のエネルギーの源となります。「素敵だな」と思う人がいたら、「自分はもう年だから」「配偶者がいるから」などとその気持ちを抑えつけず、存分にドキドキしてよいのです。

恋愛感情は心に多幸感を生み、脳に快感をもたらす物質を分泌させます。恋をすることで、人は若返るのです。もちろん、相手の都合や気持ちも顧みず強引に迫ったり、つきまとったりするのは論外です。また、家庭崩壊につながるような事態も避けるのがベターでしょう。

けれど、誰かのことをいいなと思う純粋な感情は、ぜひ大切にしてください。そのときめきが、人生に彩りを与えるとともに、脳も気持ちも若返らせてくれます。

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