世界中の全ての社員が経営者感覚を持つ

全員経営とは、世界中の全ての社員が経営者感覚を持ち、全員で経営をしていくことをいいます。

柳井さんは「自分で考えて、自分で行動する。これが商売の基本だ」と常々口にしています。そのマインドを役員や管理職だけでなく、店舗のスタッフも持つ仕組みをユニクロでは構築しています。

人々のアイコンが描かれた様々な木製キューブ
写真=iStock.com/tadamichi
※写真はイメージです

たとえば、東京の吉祥寺店のウィメンズアウターの担当者でしたら、その売り場を経営者の意識でマネジメントします。自分の担当部門で地域のニーズに合ったどんな品ぞろえ・売り場にしてどれくらいの売り上げ・利益を稼ぎ出すのかを経営者として考え抜き実践し、PDCAサイクルを回します。社員でもアルバイトでも経営者の意識を持って働きます。

もちろん、ハードルは高いですが、それが実現できたときのやり甲斐は大きなものがあります。そのハードルを全ての働いている人が飛び越えるための仕組みが必要になるのです。

世界共通の土台である「グローバルワン」という仕組みに、誰もが自分で考えるマインドを持つ「全員経営」という仕組みを掛け合わせる。全ての社員が経営者マインドを持ち、全ての社員の叡智を集めた世界で最も良い方法を実行していくことがグローバルワン・全員経営です。

過去の延長できちんと回すことはあまり評価されない

ユニクロを世界的企業に成長させ、市場からも高い評価を得る原動力になったといっても言いすぎではありません。ユニクロでリーダーに求められるのは「変革と創造」とよくいわれます。変革とは仕組みを変えることで、創造は仕組みをゼロからつくることです。

日本の企業では既存の仕組みを効率良く回すことが評価されがちですが、ユニクロでは過去の延長できちんと回すことはあまり評価されません。リーダーとは仕組みをアップグレードさせたり、つくったりする人なのです。​

たとえばユニクロの最近の最重要プロジェクトといわれている「有明プロジェクト」というDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトがあります。このプロジェクトが何を変えたかというと、サプライチェーンと顧客体験という会社のあり方そのものを変えました。

ユニクロの急成長の原動力は他社が真似できない品質の商品を大量生産することでした。日本でトップのSPAの地位を確立しましたが、このプロジェクトでは情報製造小売業への進化を試みています。デジタルデータを活用して、必要なものを必要な量つくり、無駄なく消費者に届けるという製造業の最大の課題に挑んだのです。