がん検診を毎年受けていたのに、進行がんが見つかったというケースは決して珍しくない。ジャーナリストの岩澤倫彦さんは「25年にわたるがん患者への取材で分かったのは、『早期発見には適切ではない検診』が漫然と続いている実態だ」という。北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏の監修で、命を守るために必要ながん検診・がん検査の選び方を紹介する――。(第4回/全4回)

がん検診の常識は「時代遅れ」になった

多様性社会と同様に、がんも患者によって罹患リスクは大きく異なる。

年齢、生活習慣、ウイルスの感染、そして遺伝子などによって各種のがんになる可能性は人によって違う。

“全員一律に毎年同じがん検診を受ける”という集団検診のスタイルは、昭和時代に始まった。現在行われているがん検診には、「死亡率減少効果」のエビデンス(研究)が存在するが、大半が数十年前に行われた研究である。医療機器が大きく進化した現在の状況に当てはまらないのだ。

つまり、「毎年がん検診を受けているのに、進行がんで発見された」という悲劇が起きる要因の一つは、“時代遅れのがん検診”にあるのだ。

それでも続いているのは「利権」だから

がんを早期発見するという観点では、決して最適ではない検診が行われていることは、医療関係者にとって周知の事実。では、なぜ検診は変わらないのか?

最大の理由は、がんの集団検診が莫大な収益が毎年入る、事実上の「利権」となっていることだろう。発注者である自治体の幹部が、検診団体に天下りしている実態も取材で確認している。莫大な「利権」が絡んでいるために、時代遅れのがん検診は、臨床医からの指摘を受けても岩盤のように変わらないのだ。

このような裏事情があるので、がんから命を守るためには、各自にとって最適ながん検診の情報をアップデートする必要がある。そこで、がん部位別死亡数の上位5番目までの早期発見に最適な検査方法をご紹介する。

【図表2】男女別がん死亡者数(2022年)
令和4年人口動態統計より編集部作成