「おっしゃられる」は二重敬語で盛りすぎ
「お気付きのことがございましたら、何なりとおっしゃられてください」
こう言われて「では早速」とばかりに「それ、二重敬語ですよ」と物申したことはありません。仕事でもない限り、言葉の誤りをいちいち注意するのは、無粋ですから。とはいえ、もし自分がサービスを提供する側なら、二重敬語は避けたい過剰敬語の一つです。
二重敬語だと認識しながらあえて使う業界もあるようですが、一般的に長たらしい印象を与えることは否めません。そんな二重敬語の定義をここで確認しておきましょう。
「敬語の指針」(文化庁)にはこうあります。
一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という
これに照らせば「おっしゃられる」も「言う」を「おっしゃる」と尊敬語にし、さらに「れる」を加えて尊敬語にした二重敬語です。「仰せになられる」も「言う」を「仰せになる」と尊敬語にし、さらに「れる」で尊敬語にした二重敬語です。
もっとあります。次の表現も左の文は二重敬語で、本来は右のようにすべきです。
×お召し上がりになられている → ○お召し上がりになっている
×手紙をお書きになられている → ○手紙をお書きになっている
×本をお読みになられている → ○本をお読みになっている
×手紙をお書きになられている → ○手紙をお書きになっている
×本をお読みになられている → ○本をお読みになっている
「冗長な表現=二重敬語」ではない
ちなみに、ネット上ではよく次のような表現まで二重敬語だと指摘する誤った解説も見かけます。例えば、先に挙げた下段の後半部分を丁寧に言い換えたものです。
「ランチをお召し上がりになっていらっしゃいます」
「手紙をお書きになっていらっしゃいます」
「本をお読みになっていらっしゃいます」
「手紙をお書きになっていらっしゃいます」
「本をお読みになっていらっしゃいます」
いずれも「お……になる」と「いらっしゃいます」を接続助詞「て」でつないだ敬語連結。冗長な感じがあるのは確かですが、二重敬語には当たらず、誤用ではありません。
次に「二重敬語ではあるが許容されている二重敬語」を取り上げます。「せっかく二重敬語をマスターしたのに」とがっかりさせてしまうかもしれませんね。しかし、何事にも例外はあるもの。敬語にもそれは当てはまります。