コレステロールは健康を保つために欠かせない成分

ただの悪者のように認識されていることもあるコレステロールですが、実際には僕らが健康を保つために欠かせない細胞の成分。正しく知っておくことが大事です。

コレステロールは脳や肝臓、神経組織などに多く存在するもので、脂質の1種に分類されます。細胞膜の主成分であり、体内で合成される各種ホルモンや、胆汁酸、ビタミンDの原料でもあります。

僕らは必要量の約7~8割を肝臓などで糖や脂肪を使って合成していて、残りの約2~3割を食事から摂ります。

脂質に分類されているのは、水に溶けない性質をもっているため。ですから、血液中を流れるとき、コレステロールはたんぱく質と結合した「リポタンパク質」の状態で移動しています。

LDL(低比重リポタンパク質)と一体化するとコレステロール運搬ではたらき、HDL(高比重リポタンパク質)と一体化すると血管からコレステロールを除去するはたらきをします。そのためLDLコレステロールが過剰になると動脈硬化の原因となってしまうのです。

65歳以上はコレステロール高めのほうが長生きする

そこでLDLコレステロールは「悪玉」と呼ばれ、HDLコレステロールは「善玉」と区別されて、主に「悪玉」のおかげでコレステロールが目の敵にされるようになったわけです。

しかし、コレステロールが欠乏すると、細胞膜や血管が弱くなったり、免疫力が低下したり、脳出血なども起こりやすくなります。運搬役のLDLコレステロールも、掃除役のHDLコレステロールも、どちらも必要なのです。

ヒト細胞または胚性幹細胞のイメージ
写真=iStock.com/anusorn nakdee
※写真はイメージです

現代の一般的な食生活でコレステロールが著しく不足することはほとんどないものの、極端なダイエットや慢性的な栄養不良などから不足することもあります。

また、「コレステロールパラドックス」という言葉があって、65歳を超えると、コレステロールが少し高い人のほうが長生きするというエビデンスが出始めていて、薬でのコントロールを見直す動きも出てきています。

日本の医療では、コレステロール値が高いと動脈硬化を防ぐための服薬治療が行われることが多いのですが、アメリカでは70歳以上の人には服薬治療をしない傾向にあるようです。僕の内科外来でも、70歳以上の人の場合は、服薬治療をやめるように努めています。