たまごが「ブレインフード」と呼ばれるワケ

脳の重量は体の約2%にすぎませんが、脳は僕らが1日に必要とするエネルギーの約20%を消費するとされています。つまり、脳はたっぷりの栄養を要する、特別な器官というわけです。

中高年では、貯筋と同様、脳の健康もちょっと意識しますよね。できれば認知症とは無縁の人生を送るために、脳の栄養に適した「ブレインフード」を積極的に摂りたいもの。僕も気をつけていて、その意味でもたまごは王様クラスだと思っています。

なぜなら、卵黄に豊富に含まれるレシチン(リン脂質、別名フォスファチジルコリンとも)は、細胞膜の主成分で、脳神経や神経組織を構成するものだからです。これが不足すると、細胞膜と細胞のはたらきが悪くなり、脳の機能が低下します。

さらに、レシチンには「コリン」という成分が含まれ、これは脳に入ってはたらける数少ない物質の1つです。

脳や脊髄、網膜など神経組織にある血管は、血液から神経組織に必要ないものが入り込まないように管理する、言わば「関所」のような機能を備えています。これが「血液脳関門」というはたらきで、コリンはここを通過できるのです。

「アセチルコリン」が減少すると認知機能の低下に

コリンは脳のなかに入ると「アセチルコリン」という神経伝達物質になります。アルツハイマー型認知症の患者の脳では、このアセチルコリンの量が減少するほど、認知機能の低下がみられます。

また、必須アミノ酸の1つ、メチオニンも神経伝達物質の材料となるもので、同様にアミノ酸スコア100の牛乳や大豆と比べてもたまごは含有率が高いです。このメチオニンは、抑うつなど精神症状の改善に役立つといわれています。つまり、たまごを食べることは、多角的に脳の機能低下を防ぐことになるわけです。

なお、レシチンには水と油を混ぜ合わせる乳化作用、酸化防止作用、保水作用などのはたらきもあり、たとえば、その乳化作用のおかげで血液中のコレステロールが血管壁に溜まりにくくなり、血中コレステロール量がコントロールされます。この乳化作用は、油に溶ける性質をもつビタミン(脂溶性ビタミン)のビタミンA、D、E、Kなどの吸収にも役立ってくれます。